中学3年生。ひとりっ子。
半年前に両親が離婚して、今は母と2人暮らし。
父とは中学に入ってからほとんど会話をしてなくて。
でも引っ越し後は2回会いに行った。
何年ぶりかの会話。
死ぬほど緊張して。
驚くほどにぎこちなくて。
親子らしくないどころか、
あまりに不自然で、
初めましてのような雰囲気を感じながらも。
会話といえるかどうかは分からないけれど。
それでもたしかに言葉を交わした。
私は父が嫌いだ。
それを再確認するために父と会ったみたいで、笑ってしまいそうなくらい。
別に父に何かされた訳ではない。
虐待なんてないし、怒られたのだって数回。
特別ブスでもなければデブでもなく。
父は人並みにお金を持っている。らしい。
職業は塾を経営している。
基本何をやってもそこそこにこなす人。
私は父のことをあまり知らないが、
父が努力家だということは知っている。
趣味を楽しみ、頭が良く、人当たりの良い父は、どちらかというと自慢の父親のはずだ。
でも私は父が嫌いだ。
『性格が合わない』
文字にすればそれだけなのかもしれないけれど。
私は父の、悪気のなさそうな笑顔で周りの人を傷つける所が大嫌いなのだ。
自分勝手で。
無神経にも程がある。
『俺様』
って。
アイツの顔に書いてある。
眉毛を下げて。
顔をくしゃくしゃにして。
困ったように、
嬉しそうに、
馬鹿にするように笑う
父の笑顔が大嫌い。
その笑顔を踏み潰してやりたいと思ってしまう。
もちろん父には悪気がない。
『家族で俺が1番偉い』
『俺の言うことを聞け』
『俺の周りの雑用は全部やってくれ』
父の心の声が、
表情や行動に出まくっている。
それが当たり前だと思っているのだ。
私と母の気持ちなんて、
父からすればどうでもいいのだ。
ただ、
笑ってるか。
泣いてるか。
それだけ。
父の中に私たちはいない。
父は私に大好きとか言うけれど、
周りの目を気にして仲の良い親子を必死に演じようとしているだけだ。
そんなの演じ切れていないに決まってる。
私は引っ越しの日、
母に内緒で父に手紙を渡した。
少しの感謝とこれからのこと。
たしかお母さんに心配かけないように、自立して、ちゃんと生きてく。
とか書いた気がする。
最後に「私はお父さんが苦手」って書いた。
あの人は傷ついたはず。
心も。プライドも。
ちょっとは何かが変わるのかもしれないと、
期待した私が馬鹿だった。
父はもうすぐ本を出版すると言い出した。
原稿を読んでくれと言われ、
軽く読んだ。
それは死にたいくらいに恥ずかしい内容だった。
父の人生をテーマにした本だが、
まるで自分が悲劇のヒロインのようで。
時間と金を無駄にするための本だった。
おそらく父は今、お金があるのだ。
そりゃそうだ。
前は自分の稼いだお金をほんの少しではあるが、家族にかけてくれていた。
しかし今はその金が全部自分のものなんだから。
私と母は日々節約して、
シングルマザーのための補助金を国からもらって生活している。
その上私が受験生という理由で、
塾に行かせてもらっている。
こんなにお金をかけてもらっているのにもし受験に失敗したらと、
とてつもない不安の中、必死に生きている。
私も身勝手ではあるが、
正直本を出す金があるのなら、ほんの少しの生活費をくれてもいいんじゃないかと思ってしまう。
そういう所が嫌いなのだ。
私たちの生活なんて考えもせず、クソすぎる本を出版すると、私の大嫌いなあの笑顔で報告してくる無神経な所が。
私はこれからも、父に会うべきなのだろうか。
私の気持ちとしては会いたくない。
しかし、父の気持ちを考えてしまう私は嫌味の塊なのだろうか。
断るにしても理由がない。
しつこく誘ってくるため、そろそろ不自然になってしまう。
私にとって、父は一生の悩みなのだと思う。
あなたの出したお手紙を読みました。
あなたはとても優しい人。
自分の気持ちを認めながら、他人の気持ちや意識を受け止めようと必死に努力される方。
あなたより、かなりの高齢者である私からのお願いを聞いてくれませんか?
あなたは優しく感受性に富んだ方だから「すごいたくさんの事」に気が付いてしまいます。
だからこそ、今は「自分の基本」だけを気にして欲しいです。
「自分の基本」とは、「自分が一番大切な物」。
それ以外の事には、ひとまず蓋をして。
そうしないと、他人様から見たあなたを「誤解」されそうで私は心配です。
「自分の基本」をしっかり守れる様になった時、きっとあなたは「勇気ある強い人間」になれる筈。
「勇気ある強い人間」になった時、あなたはあなたの周りにある「過去を含めた全ての煩わしい事」を認識しつつ、「これは必要。これは不要」と分けれる様になるはず。
だから、今は「自分の基本」だけをしっかりと守って欲しいです。
年配者である私から、まだまだ若いあなたへのお願いです。