ふと思い立って、久々にきちんと鏡を見た。
確かに見慣れたはずの女の子が写っていたんだけれど、知らない子みたいな感覚。
あれほど嫌いだった笑顔を作っても以前のような嫌悪感は蘇ってこなかった。
若干大きさが左右非対称だったはずの目もそんなに気にならなくて、さんざん自虐してきたくせっ毛はただの個性に見えた。
偶然自分を可愛いと思える日なのかもしれないと思ったので、いろんな表情をしてみた。
無表情、たまに一人のときにする泣きそうな笑顔、皆と喋るときの笑顔、驚いた顔。
僕はお世辞にも顔立ちが整っているわけではないけれど、それはそれで何だか人間味があってちょっとだけ可愛かった。
ずっとこの性別も顔も受け入れられなかった。
自分が大嫌いだったし、自分が嫌いな自分はもっと嫌いだった。
声が女の子らしくて綺麗だと、スタイルが良いと言われるたびに、口ではありがとうと言いつつも、誰もいないところで首を絞めつけてきた。
だってそれは、なりたい自分じゃなかったから。
でも、最近は周りの人に数年前と比べて可愛くなったと言われることが嬉しい。
何だか、外見でかっこよくなれなくても良いのかもしれないと思えた。
クールで努力家な性格の人になれればそれで良い。
気まぐれで、鏡の中の子に向かって生きろと言ってみた。
周りが思っているほどのいいこじゃないかもしれないけれど、僕が思うほど僕は弱くないはずだから、きっと大丈夫。
せめて18になるまでは生きよ。