昔、死のうと思って、包丁を体に刺そうとしたけれど……まあ、無理だった。
代わりに、近くにあった枕を刺した。「ああ、こんなに力強く振り下ろさないとダメなのか」なんて思って。心臓バクバクして。
自分の体に同じことができるとは思えなくて諦めた。
『生』と『死』を天秤に掛ける。どちらも軽くて重い。軽い方を選んだのに、選んだ瞬間急に重くなるような、そんな感覚にどうすればいいかわからなくなって、動けなくなった。
揺蕩う。
常に底にある「死にたい」と、遥か上空で見え隠れする「生きたい」のあいだ。
ここが海なら頑張って浮いていなくちゃ。陸地はどこですか?救助はまだですか?せめて浮き輪をください。
比喩表現、作り話。
なら、島をつくろう。自分だけの楽園。「死」も「生」も必要ない。恐怖も痛みもいらない。喜怒哀楽ぜーんぶ捨ててしまおう!自分もどっかいっちゃえ!
逃げても、追い掛けて来て、いろんなことを突き付けてくる。現実様は鬱陶しいなあ。
はぁ(ため息ひとつ)。
今日も生きてさしあげましょう。……死んでいないのだから。