幼稚園児の時まだ小さい頭で考えたのは
絵本の中のお母さんって実在するんだ、ということ。
絵本の中の優しくて怒鳴らない、叱るときも理由と合わせて話してくれる。
子供を家に置いて出ていったり子供を外に放り出したりしない。
そんなお母さん。
いないと思ってた。自分だけがこんなに落ちぶれた家庭で育っていたなんて知らなかった。
周りのお友達みんな絵本のお母さんの隣にいた。
私は違った。ビクビクしながらどうやって母親の機嫌をとろうか常に考えてた。
そんな私を恐怖のどん底から救い出してくれた保育園のある先生の話をします。
カメラが大好きで、いつも私たちの笑顔を撮ってくれるY先生。
その日は雪遊びだった。
私は雪でテンションが上がって、空高く雪のかたまりを投げた。
そしたら、運悪くそれがY先生のカメラに当たって。
私、すぐさま「ごめんなさい」って謝った。
怖かった。独りだけ外に放り出されることも覚悟した。ぶたれるかもしれないけど私がしたことなんだからしょうがないと思って。
でもY先生は、
「あらら~どうしたの?あっ、雪降ってるみたいにしたかったのか!そっか~ちょっとまってて、カメラ置いてくるね!みんなで雪降らしごっこして遊ぼっか!」
優しかった。私はきっと随分と情けない顔をしていたと思う。
もちろん安心したのもあったんだけど、それに加えて現実を知って絶望していた。
なんでこんなに優しい大人もいるのに私のお母さんはああなんだ?って。
この気づきはあって良かったものだったのかあの頃から10年たっても分からない。
でも私はY先生のおかげでこの世界の優しさと厳しさに気づくことができた。
Y先生、本当にありがとう。
今も苦しいままだけど、いつも心の傷が痛むときはあなたのことを思い出す。
そうして私は今日も生きていく。