【スタッフが訪ねたのは、小児がんと闘病中の美月ちゃん。お絵かきが大好きで、彼女のスケッチブックには――】
どこか冷めた気持ちでテレビを眺める。
昔から感動系のドキュメンタリーが苦手だった。授業でそういう映像を見せられることもあったけど、どんな顔をして見るべきかがずっと分からなかった。その後に振り返りを書かされるときは、当たり障りのないことを書いて乗り切った。中には『よくわからなかった』とか書いて先生に叱られている子もいたけど、それが書けるほど当時の自分は馬鹿ではなかった。
では、なぜ苦手なのか。
大人になった今改めて考えると、自分より大変な人を見たくないのではないかと思った。
決して不幸ではない人生だけど、苦しいことは人並みにある。そして落ち込むことも人並みにある。でも、ドキュメンタリーを見ていると、自分より大変な人たちがたくさんいる。そうすると、自分に落ち込む資格がないように思えてしまうのだ。
はは、つくづくひねくれた奴だな。
インスタントのスープに口をつけるも、もう冷え切っていた。温め直す気力もなく、シンクに流した。
ベッドの上でスマホをいじっていると、0時になった。と同時に、お店の公式ラインからの通知がいくつか鳴った。
【1件の着信 誕生日クーポンのお知らせ お誕生日おめ…】
通知欄から見えた内容を読んで、そういえば今日が誕生日だったなと思い出す。大人になると忘れるものだが、子供の頃は気にしていた。
誕生日が夏休みと被ってしまっていたため、家族以外からは祝われない子供時代だった。友達が教室で祝われているのを見て、行き場のない劣等感、もしくはそれに準ずるものを抱いた。友達によく誕生日プレゼントを贈っていたけれど、返ってきたためしは一度もなかった。
こんなにひねくれた奴になったのは、もしかしたら誕生日のせいかもしれない。
今日から自分は25歳。多分。
誰にも祝ってもらえないことを気にしていた子供時代の名残は、ずっと続くかもしれない。死ぬまでひねくれた奴かもしれない。
でも、大人になってみると、あまり細かいことが気にならなくなってきた。自分の誕生日も、年齢も、あまり大したことではなくなってきた。それだけではなく、友達とか、自分のポジションとか、教室で過ごしていたときに気にしていた色んなことも大したことじゃなくなってきた。
子供の頃の感性は、美しかった。と同時に、生きづらかった。
今の自分の感性は、もう美しくはないかもしれない。けど、少し息がしやすくなった。
だからきっと、大丈夫。
【1件の着信 誕生日おめでとー!これからもいっぱい楽し…】
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
すごくやさしい言葉をかけてあげてほしいです