夕暮れの教室は、不思議な会話が生まれるものだ。
「なあ、お前さ」
「なんだよ?」
「もしさ、寿命ってのが灯火だとするじゃん」
「急に何だよ」
「で、その灯火ってのがお互いに見えてさ。分け合うことができるなら、どうする?」
「どうするって……お前絶対漫画かなんかの影響だろ」
「ちげーよ。で、どうする」
俺は少し考えたが、抽象的な質問すぎて何と答えるべきか分からなかった。
「はは、意外と真剣に考えてくれてんじゃん」
「ちげーよ、抽象的すぎて考えようがねえの」
「そっかー、じゃあ他のやつにも聞いたから、参考までに教えてやるよ」
こんなしょうもない質問を色んなやつにしていることに呆れる。が、せっかくなら聞いてみることにしよう。
「母さんは、父さんよりも自分のほうが火が多くなるようにするって」
「え、何で?」
「俺の父さんだらしないからさ、母さん無しだと野垂れ死ぬんじゃないかって」
「ひどい言われようだな」
「まあなー。でも、母さんらしいわ。ツンデレっていうの?」
「あんま自分の母親のことツンデレって言わねえだろ」
お前はそっかーと笑い、話を続ける。
「で、姉ちゃんは親友さんと同じになるようにするらしい」
「それはなんとなくわかるわ」
「な。死ぬときは二人でカラオケ行って、歌いながら死ぬって言ってた」
「楽しそうだな」
「ね」
お前は笑みを浮かべながら、窓際に座った。
「落ちるぞ」
「俺お前ほど運動神経悪くないもんね」
そう言って鼻歌を歌いだした。
ごめん。
俺、なんでお前がこんな話題を振ってきたのか、わかってるんだ。
お前、明日にでも死ぬつもりだろ。
お前には言ってなかったけど、俺生まれつき人の寿命が見えるんだよ。
お前の灯火、もう消えかけじゃねえか。
本当はさ、見えるんなら何かしてやるべきだよな。
俺、試したことはないけど、人に寿命あげることもできるみたいだし。
でも、何もできそうにないんだ。
だってお前、これ以上生きるなんて無理だろ。
何があったかとかは知らねえけど、最近灯火が急激に弱ってきてたし。
死ぬしかないって思うくらい、辛いことがあったんだろ。
俺が勝手に生かしても、これはただのわがままだろうしさ。
けど、本当は生きててほしい。
けど、これ以上生かしたらお前が絶望する。
けど、けど、けど、……。
「どうしたの?」
「おもちゃ屋行くぞ」
「え、急に何」
「でっかいジグソーパズル買おう。それも全面真っ白のやつ」
「本当にどうしたのさ。それに、真っ白のパズルって難しいんでしょ。」
「ああ。一ヶ月とか、それ以上かかることもある」
困惑するお前を横目に、リュックに荷物を詰めて背負う。
「完成させるぞ、二人で」
お前の返事を聞くより先に、お前の灯火が力を取り戻すのが見えた。
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
すごくやさしい言葉をかけてあげてほしいです