夜を乗り切る。色とりどりの銘菓をお供に。

僕の現在位置です

クリスマス・イヴも過ぎようという時間。
あやして、肩トントンして、寝かせて。
ふぅ、と一息ついた。

しんと静かになった病棟で、メンテナンスを終えたばかりの端末に向かっていると、しばらくして師長が戻ってきた。

「お疲れ様ですー」
「あら、今日も残ってくれてたの」
「ええ。Kさんもダウンしちゃって」

二言三言交わして、僕はまた端末に向かう。
ランチョンミーティングで配る資料を仕上げなきゃならなくて、狭い机にいろいろ広げてはニラメッコしていた。
普段、そこは別の人が使っているから、自席のように好き勝手するわけにもいかず。

そうこうしていたら「僕の現在位置さん、これ」とお菓子を差し入れてくれた。
琥珀糖だった。

「そんなに高い物じゃないけどね。家ウチの近所で売ってるの見て、貴方こういうの好きなんじゃないかってピーンと来たのよ」

すごいなと思った。何がって、観察眼が。
前から感じていたけど、日々いろんな人と接している看護師は対人対応力も適応力も高い。
言われた通りで、琥珀糖は僕の好物なのだ。味や食感はもちろん、見た目の涼やかさ、そしてパッケージに至るまで、自分の美意識が共鳴する。

そのことを率直に伝えたら彼女は大きく頷いて、思った通り、と答えた。
話し方や仕草、持ち物などから、何となくその人となりを見るのだそうだ。
長年の経験と勘というものだろうか。やっぱりすごいな。

ひし形で透明で、きらきら光るそれを頬張りながら。
黙々と作業しているうちに、少しだけ冷たい朝を迎えたのだった。

#kohakutou　#琥珀糖
#銘菓　#津山屋