45241440.――ただシンプルに仕事を進めたい、それが願いであります。
夏頃のことでしたが、私が日々増加する業務に窒息しかけていたのを見かねた、いや、痺れを切らしたと言えば良いのか、兎角、上長が私の部下に手持ちの業務を強制的に振り分けたことがありました。白蛇さぁ、管理出来ないなら言ってよ、仕事下ろすからさ。大体こんな流れで。
それから現在に至るまで、良い感じでやっているように見えていたのですが、昨日から何だか様子が目に見えておかしく、明らかに苛々しているような上長の姿を見て、これは何かアカンことが起きているわね、と直観。
ざっくりと言いますと、上長と私の部下が業務上の衝突をしたらしく――まあ、割と大き目のミスがあり、その際に上長からの指示を円滑に実行出来なかったのです。誓って、私は知りませんでした!¿ 今にしてみれば、気付くことは出来た筈――何と言えば良いのか、もう業務の報告を行う上であいつは同席させなくて良い、みたいな。そんな雰囲気になった訳です。あんなに頑固なやつだとは気付かなかった、そんなことを言っていましたの。
そうなって来るとですね、一度手を離れた業務が又戻って来るんですねぇ。空いた分には新しい業務が既に存在しているのに!?
――まあ、一度手元を離れているとは言え、元々私の領分でしたし、進捗の確認はこちらからそれとなく見に行って、どんな風に進んでいるか管理しとけばこうはならなかったと思えば、結局、身から出た錆よね。私が的確に状況を把握していればこうならなかったわけよね。上がって来る数字の表面と報告だけ聞いて、うん大丈夫そうやね、とサボってた付けやな。
何年か前に私も同じような状況になり、一週間ほどシカとされたことを思い返します。これはもう駄目かもしれんぞ、と求人票をチラ見してました。その時は誰も間に入ってくれる人がおりませんでしたので、自力で鎮火しに行った訳ですが、今回、私が取りなさなければならん、と思うと些か憂鬱です。
めんどくせえのよ、あの人。大人子どもなんよ。いつこっちに飛び火するか分かったものではない。おんぼろ設備に鞭打って、人間が身を粉にしてカバーすることで何とか数字を維持している矢先に客先の予算がカットされて、全然、今期の計画通りに仕事は進まねえし、それでも前年比と遜色ない数字を上げる努力は止められないわけで、もっと出来るんじゃない?サボってるからコスト増えてるんでしょ?しっかりやってよ!みたいなスタンスで来るとか、ノンデリ族がさぁ。
まあ、頑張っている後輩の為、何より私自身の為にどうにか関係の修復をしなければならず、併し、今日それとなくアプローチしてみたら突っぱねられたので、どうしたもんかなぁと困ります。唐突に沈静化するので、それを探りながらやって行くしかないんよね。
そんなことを頭の片隅でぐるぐるさせながら業務さばいて、仕事の帰り道で晩飯を自炊で用意する気力は無いわね、と悟ってよく行く街中華へ。安いし、ボリュームがあるんよな。メンタル傾いている時は何じゃ、自分でしない味付けのものが食べたくなります。出来れば温かいものを。死にかけている時は仕事終わりは毎日行っていて、今ではすっかり顔なじみになりました。何だか安心するんですね、そこで飯食うと。
店の外に出ると辺りは真っ暗で、厳しい冬の始まりを感じる風が吹いていました。この辺りはもっと辛いくらいに冷え込みますから。実質、オフロードみたいなつぎはぎだらけの土手道を走って、帰宅ラッシュで込み合った橋をのろのろと渡りながら、ふと夜の中に白く浮かび上がる雑木林を見かけて、それが電飾の光によるものだと気が付いて、嗚呼、もう十二月かぁ、クリスマスかぁ、嗚呼、嗚呼……とぼんやりと考えました。
軽い渋滞の為に何本か吸った煙草の煙が目に沁みるようで、窓を開けてみると埃っぽい風にはもう草木の匂いは無く、淡い色味の簡単なイルミネーションの側を通り過ぎる時、側の影の中に赤毛の女が一人立っているような気がして、思わずアクセルから足を離してじっと見やったのですが、それは単なる空目で、苦しくも無いのに何度かせき込んでしまう。
咳をしても一人、何か沁みるな?
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小瓶主さんの想いを優しく受け止めてあげてください