富士山のふもとの樹海。
僕に帰るようにと言って去って行った自殺防止のワゴン車のおじさん。
疑われたかもしれない。
駅から離れたこの場所に
歩いてくる人なんていない。
一人で歩いてきた僕は
他人から見たら異様だ。
薄暗くなった観光地には、
もう観光客は誰もいない。
昼間は楽しそうな観光客の大勢いるこの場所に、夕暮れに暗く沈んだ僕がただ一人だけ。
誰もいない。
歩いているのは僕ひとりだけ。
来た道を戻りながら放心状態だった。おじさんと話したことで張り詰めていた気持ちが少しだけ緩んだ。やると決めたことには変わりはなかったけれど、それでも歩道から暗い樹海に足を踏み入れるのは勇気がいる。足取りが重かった。
歩いては立ち止まり、歩いては立ち止まる。
完全に日が沈んで真っ暗になったら手元も見えなくなってしまう。リュックの中のビニール紐。もう時間がない。行かなければ。
胸が圧迫されるような苦しさを感じながら、樹海の一本道でうつむいた。
ふと、遠くに車のライトが小さく見えた。車もライトを付ける時間。僕は近づいてくる車に顔を見られたくなくて深くうつむいた。僕とすれ違って通り過ぎていくと思ったその車は、僕の横で急停止して三人の警察がバタバタと降りてきて僕の前に立ちはだかった。
車はパトカーだった。
(今日はここまで。まだ続くよ)
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
小瓶主さんの想いを優しく受け止めてあげてください