彼女が誰だったのか思いを馳せていますと、誰かが此方へ歩いてきました。
「こんにちは。良ければ座られますか。」
「ああ。それじゃあ、相乗り失礼するよ。」
彼は人の良さそうな笑みを浮かべ、にこにこ語りかけてきました。
「俺はさっきの獅子の停車場で乗ってきたんだよ。君はどうだい。」
「それが、覚えていないのです。切符とやらも持っていないですし。」
すると彼は驚いたように目を見開きました。
まるで春の天候のように表情が変わる彼は、とても無邪気でした。
「俺も前にあったよ。この汽車に乗ったから、俺は変われたんだ。」
柔らかく微笑む彼は、何処かで聞いた話と重なり合うように思われました。
また訪れた奇妙な感覚を逃さぬよう、今度は真っ直ぐ捉えると、とある輪郭が浮かび上がってきました。
「貴方、ブラック企業で働くサラリーマンの親友がいますか。」
「……まさか、彼が来たのかい。」
その途端、彼の顔は歪みました。
「……そうか、彼奴はそんな話を君にしたのか。」
サラリーマンの男性から聞いた話を伝えると、彼は深く考え込むような仕草をしました。
「全く、来てくれて良かったのに。卑屈だなあ。」
二人の関係を邪魔してしまったようでどうにも気まずく、つい外を見ました。
すると、星で形作られた獅子が勇敢に立っていました。
その勇ましさに圧倒されていますと、彼が話しかけてきました。
「きっと、君は何かを掴んで帰らなければならない。もし俺の話がトリガーとなるなら、喜んで話すよ。」
どうだいと首を傾げてみせる彼の言うことが、どうにも掴めずおりますと、不意に記憶が掘り返されました。
『親友が馬鹿にされてるんだぞ。なんで何も言わないんだよ。』
ここに来る前誰かに言われたような、そんなこと無いような、もうよく分からなくなりました。
彼の話を聞けば思い出せるかも知れないと思い、真剣に頷きました。
すると、幻灯が現れると同時にぱっと広がりました。
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