「あいつは究極のお人好しだったんですよ。」
幻灯はいつの間にか消えてなくなり、二人の間には代わりに沈黙が漂っていました。
私は気まずくなりつい窓の外を眺めますと、そこには見事な星屑の川が流れておりました。
「見てください。天の川ですよ。」
「ええ、美しいですね。」
気まずい沈黙は感動の静寂へと変わり、荘厳華麗なその様に見惚れておりました。
『次は天の川河口、天の川河口に御座います。』
アナウンスが流れますと、彼はそわそわと動き出しました。
「どうされました。」
「ああ、私はここで降りなければならないのです。」
「そうですか。親友さんもお待ちになられていることでしょう。」
すると、彼は首を振りました。
「彼はきっと、幻惑星で降りているはずです。」
「では、何故そこへ行かぬのです。」
「私にはその資格がないからですよ。」
訳が分からず戸惑っておりますと、汽車はゆっくりとスピードを落としはじめました。
窓の向こうに浮かぶ星たちも、のんびりとした動きに変わってゆきます。
「私は何故仕事をするのか、彼の前で言える自信がないのです。」
大切な人との時間を豊かにするためだと気づいてはいるんですけどね、と続けるその横顔はとても孤独に見えました。
「では、私はここで。」
「ええ、お元気で。」
何か彼に伝えなければならないことがあった気がしましたが、どうしても出てこないので、そのまま彼と別れました。
もくもくごろごろ、夜汽車は静かに進みます。
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
▶ お返事の注意事項