私は小さい頃から私立の学校に通っていて、金銭的にも、周囲から見れば「恵まれた環境」に育ってきたと思われている。私は受験で苦しむこともなく、働いたこともなく、世間から見たら“甘い汁を吸って生きてきた子”だと思われてもしょうがない。
でも、本当に悩んでいることは、そんな表面からは見えないところにあって、誰にも言えない。だから、悩んでいるんだろうけど。
私が悩みを打ち明けようとすると、「でも恵まれてるじゃん」「家族にもお金にも困ってないし」と言われて、話す前から否定される。それがどれだけ虚しいかなんて、誰にも伝わらない。
家族とうまくいっているわけじゃない。お金や肩書きがあるからといって、心が守られるわけじゃない。それなのに、「そういうのは贅沢な悩み」と切り捨てられて、私の苦しみは、存在ごとなかったことにされてしまう。
ずっと、人の話ばかり聞いてきた。悩み相談をされても、自分もつらいと言うタイミングなんて来なかった。私の番は、ずっと先延ばしにされたまま、結局どこにもない。
だから時々思う。いっそ、誰が見ても「この子は傷ついてる」ってわかるような、明確な理由が欲しかった。
苦しんでいても、それを伝える手段がない。伝えようとしても、「それくらい」と笑われて終わる。だったら最初から、誰もが納得するような辛さが、私にもあったらよかったのに。
ODや自傷行為を繰り返しても、誰も助けてくれなかった。
あのとき、誰かひとりでも気づいてくれていたら、私はこんなにはならなかったのかもしれない。こんな発言、あまりに気持ち悪いかもしれないけど。でも本当は、誰かに助けてほしかったんだと思う。
まわりの友達が先生や大人に相談して支えてもらっているのを、私はずっと横から見てた。輪の外に立ったまま、「そうやって人は救われるんだ」と眺めていただけだった。
なんで、私にはそれがなかったんだろう。
不眠症で夜は眠れなかったし、ストレスで倒れて意識を失ったことだってあった。それでも誰も心配なんてしてくれなかった。
本当にそれは、私が恵まれてるからだったのだろうか。
授業中に眠くなるのも、不眠症のせいなのに。授業中に寝て、先生には叱られて、友達にはネタにされて、私はもう笑うしかなかった。
体調が悪いって伝えても、「仮病でしょ」と決めつけられる。周囲の子がちょっとしんどそうにしただけで、先生や友達が心配して優しく接するのを、私は黙って見ていた。
私がどれだけ限界でも、気づいてくれる人はいなかった。
テストが辛くて、授業の重圧に耐えられなくて、保健室で休んでいる友達もいた。その子には話を聞いてくれる人がたくさんいた。
私は、毎朝登校してからトイレで吐いていたのに。誰も知らなかったし、気づいてもくれなかったけど、それでもちゃんと学校に来てたよ。
だから余計に思ってしまう。その子は、勉強もできて、大人たちからも信頼されて、友達もいて、それでも悩んでいたけれど、私には彼女が話す悩みに本当の意味では共感できなかった。
だって、彼女には全部あったように見えたから。私には、何もなかったのに。
私は、誰かにわかってもらえるような理由が、ずっと欲しかった。
傷ついた顔をしても、病んだ言動をしても、揶揄されないような、正当化される理由。「それなら仕方ないね」と言ってもらえるような背景。
それがあったら、私はここまで自分の感情を押し殺さずに済んだのかもしれない。
もう、自分の気持ちに嘘をつきたくない。
助けてって思ってるのに、「私は大丈夫」って笑うのはもう疲れた。
誰にも見つけてもらえないまま、恵まれてるって言葉だけで傷を塗り潰されて、それでも黙って生きてきた。でも、私はちゃんと傷ついてる。
本当はずっと認めて欲しかったんだと思う。
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