夜桜 零 さんへ。
過去にイマジナリー・コンパニオンを認識できなくなった方は、基本的に再認識できません。そもそもの話ですが、作るとか、作らないとか、そういう存在じゃないんですよ、イマジナリー・コンパニオンは。
遅くとも7歳前後で、世の中のほとんどの方が、イマジナリー・コンパニオンを認識する能力を失います。プログラム細胞死のように、ある特定のタンパク質の働きによって、ヒト遺伝子の持つ特定の塩基対(3文字の組合せ)の作用が発動し、イマジナリー・コンパニオンの認識能力を失うという説があります。
ただし、まだ研究途上の分野ですので、細かい部分までは明らかになっていないのが現状ですね。創薬や疾患の基礎研究などと違って、マウスやラットに薬を投与して顕微鏡を使えば血管が光って見える、そういう進め方じゃないので、協力者、被験者(イマジナリー・コンパニオンと共存している成人)の存在が欠かせません。
僕の場合は幼少期・児童期から今まで、最初に認識したのが4歳としたら実に32年もの間、随分と長い年月をイマジナリー・コンパニオンと仲良く一緒に過ごしてきました。幼少期は「住んでいる」とか「呼び出す」といった感覚は無く、「交信」「遊び相手」という捉え方をしていたので、ある意味では無意識下の存在というか、気付くと視えていて、気付くと居なくなってて、その繰り返しでしたね。
今は、呼び出せば必ず出てきますし、呼ばなくても「ぴょんぴょん」と出てくる時は大体、向こうも機嫌が良いですよ。まあ、基本的に「構ってちゃん」ですから。二人でサシで話す時は必ず「カウンセリング・ルーム」と名付けた部屋で過ごします。
通常は人間の姿で認識されると考えられていたイマジナリー・コンパニオンが、私からは茶色いウサギとして認識されていると知った私の元の主治医は、未だに私のことを特殊例として扱っているんですよねぇ(複雑な心境)。そこまで特殊じゃないだろ、と。世界中さがせば他にも居るだろうに。
過去には、某研究所の研究事業にも協力した事があります。報酬はそこそこ良かったですよ、交通費も出たし美味しい食事も食べられたし。少し疲れたけど。
成人の宿主と共に存在するイマジナリー・コンパニオンは、伴侶的に働くぶんには宿主に何の影響も与えません。だから、僕みたいな特殊例であっても、特に治療の対象にはなりません。自傷他害の恐れもないしね。
ただ、宿主に対し、あからさまな敵意を向けてきたり、宿主由来の人格よりも前に出てきて好き勝手に振る舞う(=解離+人格交代)事があったりすると、解離性同一性障害と診断されたり、統合失調症の幻視・幻聴症状の一つと診断されたりすることがあるようです。
ご本人たちがイマジナリー・コンパニオンだと思っていたものが、実は精神疾患の症状で、それも氷山の一角である可能性を考えると、成人のイマジナリー・コンパニオンの扱いは難しいと言えますね。
ご参考まで。
僕の現在位置より