思い出話。
このあいだ初めてマニキュアを買った。
駅前のショッピングビルをふらふら歩いていたとき、テナントの雑貨屋さんで手に取ったもの。
カラーは、ピンクの強い、マットなピンクベージュみたいなかんじ。
珍しい色合いがすぐ気に入った。
周りにも、あまりみない色だね、と聞かれては悦に入り、何度か使っていた。
昨日もいつものように塗って、いつものように乾かしながら眺めていた。
ところが何かの拍子に思い出してしまった。
「私、この色をみたことがある。」
十数年前。
ちょうど冬頃だったか、私はランドセルのカタログをみていた。
そのとき、ある色のランドセルを私は心に決めた。
これをお店で買ってもらうんだ。
でも、私が買ったのは違う色だった。
土壇場で、もっと赤みと照りのある色を、背伸びして選んでしまった。
両親や祖父母の前でなにをかっこつけたかったのか。
6年間、悔やんだ。
年を経るにつれ愛着はわいたが、それ以上のこだわりは生まれなかった。
ところがこのマニキュアは、選ばなかったほうのランドセルと、そっくりな色だったのだ。
あのとき欲しかった、ピンクのランドセル。
こんなに経ってから無意識にこの色を選ぶなんて。
昔の自分を、いい子いい子してやりたくなった。
なずな