高校生の頃に出会い、友達以上恋人未満な僕らだったけど、結局結ばれなかったね。15年たった今さらになって後悔している僕がいるよ。
自分語りがてら、この気持ちをちょびっとだけ吐き出させてほしい。
高校を卒業した遥佳は、家庭の都合で秋田県から岩手県へ。
僕はといえば、新潟の大学へ進学。よりどりみどりな女の子たちを目の前にし、目がくらんじゃったなあ。まあ、若い頃の男ってそんなもんなんだろうけどさ。
それから連絡は徐々に減っていき、いつの間にか自然消滅。あ、付き合ってはいなかったから、自然消滅は変か。
それから僕は、大学院へ進学した後に就職。新社会人の荒波にもまれながらも、一生懸命に働いていた。
そんなある日の夜。ふと思い立った僕は、布団の中でスマホを開き、ラインの友達一覧をスクロールしていた。
ラインって、電話番号が入っていたら、友達候補として表示されるじゃん。それで懐かしい人いないかなーなんて、気軽な気持ちで見てたんだ。
どれくらいスクロールしただろうか。もうちょいで一番下に行くかどうかってところで、スクロールする僕の指がピタッと止まった。
見覚えのある名前…。そして、その名前と一緒に表示されたアイコン…。それを見た数瞬、時間が止まった。心臓の鼓動が早鐘を打ち始めた。
「遥佳」の表示の上には、生まれたばかりであろう、つぶらな瞳が可愛らしい赤ちゃんの写真があった。
思わず僕は、ゆっくりと、深く息を呑んだ。紛れもなく、あの遥佳だった。目が釘付けになった。瞬きも忘れ、見続けていた。
ああ、遥佳は僕と違って、しっかりと地に足をつけ、自分の人生を歩んでいるんだな。悲しみやら、切なさやら、嬉しさやらが綯い交ぜになった言葉にし難い感情が、胸底から湧き上がる。
「25歳で結婚して、27歳までには子供を産んで、30歳からは株を始めるんだ」
遥佳がある時言っていた言葉だ。なぜだか、この言葉だけはやけに鮮明に憶えているんだ。当時から計画的だった遥佳のことだから、きっと順風満帆な人生を歩んでいるよね。
僕はといえば、紆余曲折を経て、今はフリーランスとして頑張っている。
いつか遥佳が、万が一にも気の迷いかなんかで、インターネットで僕の名前を検索することを期待している。そんで、そのときに、僕も生きていることが遥佳に少しでも伝われば、それだけでいい。
ごめん遥佳。もう顔も声も忘れてしまったけれど、今でも時々こうして思い出すのを許してな。
遥佳へ
お元気ですか?僕は元気です。
優太より