ねぇ、吉ちゃん。
こうやっておしゃべりするの、久しぶりだね。
毎日ここに来てるはずなんだけど、何故か久しぶりに君を見た気がするんだよね。
高校に入るまでは、君の世話をしてた。色々と話しかけながら君のご飯を頬張る姿を眺めて癒されていたよ。
でも、高校に入ってから段々と忙しくなって、母に世話を頼むようになった。それから君と話す機会も、眺める機会もなくなったね。
吉ちゃんは、体の大きさ以外全然変わらないね。
寒がりなのも。寝相が変なのも。水替えの時脱走を図るのも。食いしん坊なのも。
一瞬躊躇しながらも、話しかけると私の方へ寄ってきてくれるのも。
君は、感情が私たちよりは多くない。
だから、毎日毎日を一生懸命に生きてるんだなって思う。一瞬一瞬が輝いてる。
過去のことをずっと引きずって、これからのこともこわくて、生きてゆく自信を持てないでいる、私なんかと違って。
あの頃、私が世話をしていた頃。
話しかける内容が段々と悩み相談みたくなって、愚痴をぶつけるようになっていった。
誰にも言えないこと。誰にも知られたくないこと。自分の暗い感情。これからの不安。
理解はしてくれないなんてこと、知ってた。
何も話せない、分からない君に、一方的に愚痴って、なんだか少しだけ満たされるような気分になってた。
何も話せない、分からない君だからこそ、安心して話せた。今思えば君に話すことで、自分に話してたんだと思う。
犬さんは、泣いてる時はどうしたのと寄ってきてくれることもある。喧嘩してる時は仲裁しようとしてくれることもある。あの子は君よりも感情が表に出やすいよね。えへへ、君もあの子も優しい子だよ。
あ、行かないで。長かった?
でもあとちょっとだけ。
……戻って来てくれてありがとぅ。
それだけでも嬉しいんだ。君は餌をもらうために寄って来てくれるんだって分かってるし、私にだけ特別寄ってくるわけでもない。
それでも重い体を動かしながら、水をかき回して、私の元へ来てくれるのが愛おしい。
君に話しかけるのが減ったのは、時間がないからってだけじゃないんだ。
愚痴を言ったって、悩んだって、何も変わらないってことに気づいたから。
きっと心のどこかで馬鹿馬鹿しく思うようになったんだ。あの頃は君に話す時間が楽しかったのに。
自分勝手でごめんね。何にも分からない君に、自分の辛くて暗い感情をぶつけまくっておいて、今さらそんな自分を嫌になるなんて。
今では、こうやって小瓶を流したりとネットで悩みを言うことで、どこにいるかもわからない誰かに、私の気持ちを理解してもらうこと、返事をしてもらうことを、望むようになった。
反応がない君に相談するより、優しい言葉をくれる誰かに相談する方がずっといい気がした。
それにここでは、否定されることなんてないしね。
本当勝手すぎるよね。
……これから、もっと忙しくなっちゃって、君の存在すらも忘れてしまう事もあるかも知れない。
それでも、私は君とのあの大切な時間は、無駄なんかじゃなかったよ。そしてひと段落したら、いつか必ず、君とまたこうやって幸せな時間を過ごしたい。約束だよ。
ねぇ、吉ちゃん。聞いてくれてありがとうね。
………寝ながらだけど( ̄▽ ̄;)モウww
長生きしてね。これからも宜しく。