日が暮れる
昼間の暑さがまだ気配を残る頃
水面は凪となり、夕焼けに色づいた
藍色の海は空との境界線を忘れてゆく
すっかり、海は命の気配を潜めた
遠くで稲妻が見えた
少し桃色を帯びた閃光が、暗雲の中を進んでいた
時計の針が時間をすすめるほどに
人の気配がいっそ増し、待ち侘びる声が聞こえて来る
さて景色は黒いキャンパスと化した
そして藍色の空に海は、眩い光で飾られた
心臓のさらに深くまで響いた轟音は
私に恐怖と輝きをもたらした
嗚呼なんて美しいのだろう
全身は怖れで満ちて、瞳と世界は輝きに溢れた
視界いっぱいに広がった多彩な光はまるで頭上から降り注ぎ、鏡下に溶けてゆく様だった
大輪が咲き、散り、轟音を鳴らしまた咲き誇る
海に映る花火の景色は
ゆらゆらと、まるで命が群れ蠢めくように生まれて死んでいく
景色はただの黒となった
身体はまだ残響に恐怖し竦んでいる
瞳は光を徐々に忘れて行き、そして
先までの景色全てが
薄れ、霞み、
ただの思い出となった。
まとわりつく湿気
重たい足取り
屋台の誘惑
人の雑音
美しはすでに過去である。