友達に「気分の浮き沈みないよね。ずっとテンション高いじゃん」と言われた話。びっくりするほど長いので、お暇な方だけ。

友達に言われたこと


「朔って気分の浮き沈みないよね。ずっとテンション高いイメージある」


嬉しくもあり寂しくもあり？

みんなの前ではウキウキワクワクちゃんでいれてるんだって思うと嬉しい
いれてるっていうか、なってるっていうかだけどね

寂しいのは、だからひとりぼっちだと沈み沈みしてるのかあって自覚したこと
あと、やっぱりみんなの前ではウキウキワクワクちゃんになっちゃうんだなあってこと


この先すごく長いから気をつけて。
気分が浮いてる自分の意味不明な小瓶です。


ウキウキって浮き浮きから来てるのかな
気分がずっと浮いてる
浮いてる浮いてる
浮き浮き
ウキウキ

なら私はみんなの前だとぷかぷかしてる
空をぷかぷか泳いでるくらげちゃんだ

ひとりぼっちだと沈み沈みしてるから
床に埋まったじゃがいもさんだね

じゃあ、じゃがいもくらげくんだ
じゃがいもくらげくん
いいなあ、じゃがいもくらげ
昼間はぷかぷか泳いでて、夜はしくしく埋まってる
ふふ、かわいい


私、みんなの前だとくらげちゃん
ぷかぷかずぅっと泳いで浮いてる
浮いてるから気分が沈まないって思われてる
でもあらふしぎ
ひとりぼっちの夜はじゃがいもさん
しくしくずぅっと埋まって沈んでる
沈んでるから気分が浮かないって思われてる
ふしぎだね
実は両方同じ人
じゃがいもくらげがほんとだよ





「浮かない顔してどうしたの？」
夢を見せるひつじさんは言いました。

「ひとりぼっちが寂しいの」
じゃがいもさんは布団にくるまりながら答えました。

「寒いお布団が苦しいの」
「誰も知らない自分がこわいの」
「うそばっかりな自分がいやなの」
じゃがいもさんはどんどん沈みます。

「そっかそっかぁ」
ひつじさんは気が抜けた声を出しました。

「ボクは頭が良くないから、キミみたいにいろんなことは考えられないなあ」

じゃがいもさんはまだまだ沈みます。

「でもね、いっこいい解決方法は知ってるよ」
じゃがいもさんはぴくりと反応して、顔をあげました。

瞬間、微笑むひつじさんの柔らかいもふもふが飛び込んできました。
びっくりした声を上げると、ひつじさんはぎゅうっとじゃがいもさんを抱きしめました。

「ゆっくりおやすみ、じゃがいもさん」



「なにかやなことあったのっ？」
にんまり笑うのはくらげちゃん。
ぷかぷか浮いて楽しそう。

「ワタシはだめなこなんです」
泣き虫あめちゃんは答えました。

「なんでだめなこなのっ？」
くらげちゃんはしくしく泣くあめちゃんのまわりをくるくる回って聞きました。

「いっつも泣いて、みんなを困らせてるからです」
あめちゃんが泣くと雨が降るのです。
みんなは雨がいやだから、雨を降らす自分はみんなに嫌われてるんだとあめちゃんは泣くのです。

「でもでもっ、あめちゃんがいないとだめなこともい〜〜〜っぱいあるよねっ☆」
くらげちゃんはぷかぷか浮いてあめちゃんに言いました。

「しょくぶつさんはおみずがなかったら、いきてけないでしょっ？」
「あとあとっ、かたつむりくんもあめがふらなきゃひからびちゃう〜〜〜っていってた☆」
「あめちゃんがいないと、み〜〜んなしくしくになっちゃうよっ☆」
可愛らしくポーズを決めて、くらげちゃんは誇らしげ。
そんなくらげちゃんを見て、あめちゃんのおめめはキラキラし始めました。

「ワタシがいないと、泣いちゃうコもいる…？」
「そおだよっ☆しくしくさせちゃあだめっ☆でしょ？」
すると、あめちゃんはぱあっと元気になっていきました。
泣いて仕方なかったあめちゃんが、なんと嬉しさでにんまり笑顔。
なんだかくらげちゃんの笑顔が移ったみたいです。

「よかったあっ、あめちゃんげんきになったっ☆」
にんまりと太陽のように笑うくらげちゃん。
つられてあめちゃんも、もっとにこにこになりました。
「くらげちゃんのおかげ、だよ…！」
くらげちゃんもあめちゃんも幸せそうに笑います。

少し経ってから、申し訳なさそうにあめちゃんは言いました。
「いつもごめんね…」

すると、くらげちゃんはむっと唇ととんがらせて
「もお！いっつもいってるけど、ごめんじゃあなくてありがと！くらげはありがと☆のほうがうれしいの〜〜！」
と言いました。

くらげちゃんがぷんぷん怒ると、あめちゃんはあたふたし始めます。
あめちゃんは混乱してしまって、なにを言えばいいのかわかりません。
くらげちゃんは、そんなあめちゃんににんまり笑顔で言いました。
「あめちゃんっ！ごめんじゃなくて？」

なにを言えばいいのかわかったあめちゃんの顔は明るくなります。
「いつも、ありがと！」
「だいせいか〜〜あい☆」
ぎゅうっとハグをするくらげちゃんとあめちゃん。

「だいせいかいのあめちゃんには、とくべつにこれをあげちゃうのだ☆」
すると、くらげちゃんは真っ赤な大粒のイチゴをあめちゃんの口にぽーいっと投げました。
甘くてみずみずしい、とっても美味しいイチゴです。


「あめちゃんっまたこんどあそぼ〜ねっ☆」
「うんっ、またねっ」
くらげちゃんもあめちゃんも、ぶんぶん手を振ってさよならの挨拶をしました。
とても綺麗な夕焼けが見えました。
あめちゃんとさよならして、くらげちゃんはおうちに戻りました。



「……つかれた、」

くらげちゃんはどこか虚空を見つめました。

「あ〜、えぇ…？」

どうやらくらげちゃんはぼんやりとした頭で、なにか考えているみたいです。


「くらげ…？、だいせいかーいってなに…」
「なんだろお…、あれ、あたまふわふわする…」
「なんか耳鳴りもひど。っていうか、あのイチゴ…ぼくが食べるつもりだったのに…。なんで、あげちゃったんだろ」
「…あ、」


「なんで、いっつも…、こうなんだろう…」


ベッドに寝転んで考え事をします。
床は散らばっていて踏める場所が少ないです。

「なんでくらげってあんなハイテンションなの」
むす、と嫌そうな顔をしました。
おかげでこんなに疲れちゃったと小言を言います。
ここにくらげがいたら「たのしいからに、きまってるでしょお〜☆」とでも言うのでしょう。


「…自分のことが自分でもわからないや」

死んだ目で呟くじゃがいもさん。

「なんで昼になるとあんな浮くわけ…？」

いいえ、じゃがいもさんではないのです。

「しかもあんな喋り方だし…」

ですが、くらげちゃんでもないのです。

「ほんと、自分が自分でいやになる」


ーーこの子はじゃがいもくらげくん。

じゃがいもさんもくらげちゃんも、実はじゃがいもくらげくんなのです。
じゃがいもくらげくんの一部なのです。

じゃがいもさんが実はくらげちゃんでもある、なんて他の誰も知りません。
くらげちゃんが実はじゃがいもさんでもある、なんて他の誰も知りません。
じゃがいもくらげくんのことも、誰も知りません。

「あ〜〜、羞恥心で死にたくなる…」

どちらもじゃがいもくらげくんなので、記憶はもちろん繋がっています。
みんなの前だとなんでか元気いっぱいなくらげちゃんになってしまうだけなのです。
どちらもじゃがいもくらげくんです。


「……ぁ…、え…っと、」
じゃがいもくらげくんはどんどん意識がぼんやりとしてきました。
布団に体を預けて、目を閉じました。
明日目覚めてなにをするのか、いまのじゃがいもくらげくんには関係ありませんでした。


これが、じゃがいもさんとくらげちゃんの秘密。



…長。

ごめんなさい。
めちゃくちゃ長くなってしまいました。
ここまで読んでいただきありがとうございます。

じゃがいもくらげくんになった時に、気づいたら落ち着いた精神になっていました。
久しぶりにぽわぽわした文章を書いて楽しかったです。

本当に最後まで読んでいただきありがとうございました。
どうかあなた様が今よりもずっと幸せになりますように。