只々死ぬことが出来ないだけの私がいる。
この世界のすべてに最早何の興味もないし、未練もない。
この世界との縁が一つずつ切れていく音が聴こえる気がする。
それは私が望んでいるが故なのだろう。
気まぐれの連絡「元気か?大丈夫か?」… 答えようがない …。
それ以上は踏み込んでこない ー 私にとっての"リアル"はもう貴方達ではないから。
話のタネにするのならば構わないけど、どうか私が居なくなってからにしてね。
同じ夢を何度も観る。
この世にはいない弟と昔のままに会話している。
眠りの中でも疑り深い私は、あれやこれや知恵を振り絞って確認作業を繰り返す。
「本当だったんだー。生きていたんだ … 戻ってきたんだ。」
「オレはお前が突然いなくなってから、それまでの日常の行動や習慣、共通の趣味も分かち合う感情も
全部意味のないものになった。出来なくなったこともあれば、自ら捨てたものもある。」
「自分で言うのも何だけど、心底クズ人間であっても唯一の取り柄は感受性だと思ってた。でもあの日から
オレは意図的に感情にOFFのスイッチを入れた … それがどんなに辛く生きる価値さえないことか、お前だけは
分かってくれると思う。何を見ても、何を聴いてもその全てでお前との会話を思い出し、思い出を語ることが
出来るよ…。今はもう思い出すのも辛くて駄目だし、思い出さなくするのは悲しいだけだ。」
夢の中で私は半年振りに自分を開放し、もう何年何十年も続けていた習慣を取り戻す。
好きなテレビ番組を見て、お気に入りの音楽に身を委ね、料理なんかも作ってみたりする…。
目を覚まし何一つ変わらない日常が吐き気と共に現れる。
分かっていることは、私が居なくなってもこの周りの世界や人達には全く関係のないことだというだけ…。
生き過ぎてしまっている代償として、去年まで二人で作っていたお盆の棚を今まで通りという訳にはいかないけど
自分なりに供えてみようと思う … 出来なかったら御免ね、また遠くない将来逢えたときに謝るから。