もうなんだか、全部嫌になってきちゃった。
多分、みんなそうだと思うし、甘ったれるなぁ!なんて思われるかもしれない。けど、もうこんなのずっと耐えられない。
私は何から何までハズレくじなのかもしれない。
昔は幸せだったんだ。おじいちゃんと母上と私と妹。裕福じゃないけど幸せだったんだ。でも、癌で母上がいなくなってしまって、後を追うようにおじいちゃんもいなくなってしまった。私達はたった二人でこの世界に放り出された。
そしたら、もう記憶にもないような父親と名乗る男が現れた。私達は彼に引き取られとある田舎で暮らし始めた。そこは彼の実家だった。今思えばそれが全ての始まりだったのかもしれない。
結論から言うと、彼と私は何もかも違った。考え方、風貌、性格。本当に親子か怪しい程に。まあそれも当然だ。彼とは母上が離婚して以降会ってない。それどころか離婚前ですらほとんど会っちゃいない。そりゃ似てなくて当然だ。
彼はとにかく横暴の擬人化だった。というか、自己中心的でプライドも高い。人間の悪い所を煮詰めたような男だ。食料は自分の分は沢山買って、私や妹の分はとても少ない。冷蔵庫が空になるのは日常。幸い私達は少食で、なんとか耐えていた。とは言え、妹は中学生。食べ盛りの成長期だ。それだと言うのに、こんな仕打ちはあんまりじゃないか。
食料問題に続き、彼の素行にも問題があった。
彼は何も言わずに突然家を開けたと思えば、数日間も帰ってこない事が多かった。どこ行ってたの?と聞いたら、さぁな。と。
なるほど、会話ができないらしい。
そんな彼にも最近彼女が出来たらしい。
去年の夏に私が部活から帰ってきたら、見知らぬ女が家にいた。最初はどこのどいつかもわからない女に驚きを隠せなかった。そこからその女は頻繁に家に顔を出すようになった。そのとき私はこう思っていた。なるほど。奴が家を空けたりするのはこの女に会いに行くためなのか。私達に食料が供給されないのもこの女に貢いでるからか。
全てが合致した。
もっとも、家を空けるのはこの女と出会う前からであるが、少なくとも最近はこの女の為であろう。
私はこの女こそが諸悪の根源だ。奴を除かねば我々の家庭は崩壊の一途を辿る事になる。そう思っていた。
高校の一番仲のいい友達にも相談をした。彼女は私が信用出来る数少ない人間の一人だ。彼女もまた苦労人で家庭問題を抱えた者同士信用し合えた。そんな彼女に言われた。もっとちゃんと色々調べないとダメだよ。って。最初は何を言ってるのか分からなかった。なんだ。じゃあ、私が女が悪いと思い込んでいるのは間違いかもしれないというのか?彼女は、そうかもって可能性の話。と言った。
私はまだ心のどこかで父親の事を信じていたのだろう。
だが、現実とは非常なものであった。
実の所、被害者は女、つまり、私が悪だと思い込んでいた彼女さんだったのだ。
それは彼女さんの事を色々探って行くうちに明らかになった。
職場で知り合った二人は付き合い始めた。
そこまではいいのだが、私の父親は思っていたより怖い人だったみたいだ。
職場にて「何時何分、なんであの男と会話してたんだ」いや、班長ですから。
LINEにて「今どこにいる」「何してる」「俺は〜してる」「どこどこにいる」聞いてねぇし、なんで教えなきゃならん。
彼女さんの寮にて「おい開けろコラ!!」と寮の扉の前で怒鳴り扉を蹴り凹ませる。部屋の中に入れてしまったら、父親が気に入らない事があれば殴る蹴る、首を絞める等。
驚愕の事実の数々に私はただ恐怖に震えるしか無かった。
極めつけに、そもそも彼女さんは沖縄の出身だった。そしてこちらに来ていたのは、彼女さんの結婚寸前だった元彼さんが亡くなってしまい、何も手につかなくなっていた彼女さんを彼女さんの母上が、外出て気分転換でもしてきたらどうだ、と言ってこちらの本州に来ていたのだった。そしてそれは一年限り。一年経ったら落ち着くだろうしこっちに戻ってこいと。
しかし、頭のおかしな私の父親はそれを良しとせず、沖縄に帰さないと言い張る。挙句、我々家族になんの相談もないまま、彼女さんを我が家に住まわせる事にしたようだ。そして今住んでいる。まだ一度も沖縄には戻れていない。
束縛もここまで来るとどうかしてる。
しかし、彼女さんは、あいつに乗っかった私にも責任はあるから。だとか、でも、優しいとこあったりするから。とか言い出してしまった。
彼女さん…一番だめな考え方だよそれ。
私の父親も彼女さんも、もうそれなりの歳だ。この決断は人生を掛けてしまっていると言っても過言ではない。彼女さんは最近こう言う。あの人この先のこと考えてるのかな。と。
私は思う。あいつなんも考えてない。
勢いだけの見切り発車。それでもう、私含め何人の人生無茶苦茶にしてきてると思ってんだ。
ええ歳こいたおっさんそんなことも分からんのか。まだ気づかないのか。
それもそうか。だって誰も言わないんだもの。お前おかしいぞって。何故かって?そんなの、後が怖いからに決まってる。もうアイツは何してもおかしくない。下手に刺激なんてできるもんか。
これが私のストレスの根源、父親の最近のストーリー。
もう父親とも思いたくない。
やつの血が流れてるってだけで私は私を殺めとうなる。
それに加え、私自身もトランスジェンダーであるとか、そこそこ重大な持病持ちだったりとかで苦しい思いをそもそもしてるんだ。
私は今月高校を卒業した。
元々進学する予定だったのが、突然去年の夏頃急にダメなんて言い出した。おかけで私は今年浪人。バイトをしないといけない。しかし、そのバイトも色々ケチつけてくる。
家庭環境最高の幼馴染が眩しい。羨ましい。妬ましい。
そんなことを思う自分自身がもう嫌だ。
なんなのさ。
幸せになりたいよ。
楽になりたいよ。
人並みの幸せを望むことすらダメなんですか。