私は自他ともに認める肥満体型の人間だ。
周りからは「やせろ」といわれる。
だが、私は知っている。痩せても「やせろ」と言われることを。
中学生の頃、私はソフトテニス部に入部していた。
入った理由は友達がいたからだ、特にテニスに興味があったわけでも、体験入部でテニスが面白いって思ったからでもない。
それでも、私は練習を頑張っていた。最初は不純な動機でも、頑張っていれば何か得られるだろうと思ったからだ。
だが、結果的に得られたものと言えば、運動の恐怖だけだった。
頑張って動いていても怒鳴られて怒られる。チームメイトからは「しっかりしろ」と言われる。
もっと動けと言われても、これ以上にどう動けばいいかわからない。
走りは最もきつかった。肺や横腹は痛くなるし、ほかの部員との差は開くばかり。
遅れたら追加で走らされた。
筋トレもきつかった。少しできないとすぐに怒られた。
涙をぬぐって汗で全身を濡らして、必死にやっても結局できなかった。
そういう行動が部員をイラつかせたのか、ラケットで背中をたたかれたり、的当てゲームの的にされたりしていた。
辛かった。
それでも練習にはついていき、3年間を乗り越えた。
テニスはもう二度としないと決めた。
仮にも練習について行っていたからだろうか、体重は平均にぎり収まる程度だった。筋肉量を考えれば妥当で健康的な体重だ。
それでも私はクラスメイトに「太っている」「もっと痩せろ」と言われ続けていた。
あれ以上にきついことをしなくちゃいけないのなら、それを強いられる人生であるのなら、死んだほうがましだ。
妹に言われた。
「太っている人間は働いていてもニートと変わらない。太っている人間に価値はない」
だったら殺してくれ。
痩せていると良いのか? 痩せたらどうにかなるのか?
なぜ苦しい思いまでして痩せなくちゃいけない?
運動、運動、運動、運動、もううんざりだ。
お願いだから価値がないというのなら殺してくれよ。
もう嫌なんだよ、頑張っても誰にも認めてくれなかったくせに、後出しじゃんけんみたいに「あの時は良かったのに」とか言われるの。
運動が怖い。
運動をしても結果が出ない体が憎い。
過去の私と今の私を勝手に比べる他人が憎い。
怒られるのが怖い。
頑張っても認められないことが怖い。
食生活だって普通と何一つ変わらない。
そんな暴飲暴食してるわけじゃないし、何でもかんでもマヨネーズかけたりしているわけでもない。
飲んでるものはほとんど水だし、間食だって全然してない。
炭水化物は抑えてる。週に3回程度筋トレの曜日を設定して続けてる。
もう、何も食べなければいいのかな。
不健康な痩せ方したくないって思ってたけど、仕方ないか。
走りたくはないし、スポーツも絶対にしたくない。
筋トレだって、精神的にきついのを我慢してやってる。
ああ、こうやって「こんなに頑張ってるのに何で報われないの!?」って言ってるの、悲劇のヒロインぶってて嫌だなあ。
気持ち悪い、吐き気がする。
……あれ、なんでこんなに病んでるんだろう。運動が怖い話をするはずだったのに。