地方の小さな街の大学に通っている。一人暮らし。この大学に入るまで、これまで何回か引っ越したことがあるけれど、どこもそれなりの都会と呼ばれるところに住んでいた。
今は、コロナウイルスの対応のため、学校の指示で、関東関西をはじめ、都市部へ行くことが制限されている。小さな街に半ば閉じ込められるような形で、日々学校と家の往復。頭がおかしくなりそうだ。僕の住むこの小さな街も良いところだ。街並みも整理されていて綺麗、澄んだ空気とか、星空とか、自然とか、良いところはたくさんある。だけれど、物足りない。というか、この狭い世界に閉じ込められることが、僕の精神に相当なダメージを与えている。
専門的な学部なので、ほとんどの授業をほとんど同じメンバーで受ける。毎日同じメンバーと顔合わせて、学校帰りや休日に買い物やカフェに行っても、店が少なすぎて選択肢が少ないから、たいてい知っている人に会う。同じ学校の人間の多くが学校のすぐ近くに一人暮らししているから、近所を歩くだけで、たいてい誰か知っている人に会う。そんな皆が話題にすることといえば、学校の試験の話、人の成績の話、誰と誰が付き合ってるとかって話、誰かの悪い噂…。
この小さい街のどこにいっても、そんな誰かに会ってしまう。おかしくなりそうだ。オンとオフの切り替えができない。
澄んだ空気や大自然、星空はもう飽きた。
都会のものすごい人混みや、狭い空が恋しい。満点の星空よりも、都会の輝く夜景が恋しい。汚い空気ですらも恋しい。学校が終わったら、毎日色々違う店やカフェに行き、まったり勉強したり、ウィンドウショッピングをしたり。見て歩くだけでも目新しいものばかりの街並。少し電車に乗ればもうそこは知らない街で、知らない人ばかりで、誰も知らない混雑の中をただ歩くだけで、新鮮な気分になれる。美術館やコンサート、話題のスポットにショッピング…休日は何をしようか、どこに行こうか迷って、わくわくしながら毎日過ごす。
都会はうつ病になりやすいとか、よく言われるけど、はっきりいって逆だと思う。都会では、学校や仕事が終わって、人混みの中に入れば、もう誰かに会うことはほとんどない。一人になれる。オンとオフが切り替えられる。嫌なことがあっても、逃れる場所がたくさんあるし、気晴らしをする場所がたくさんある。学校のほかに、バイト、サークル、オフ会、その他習い事やボランティアなど、様々な場面で人間関係を築くことができる。複数のコミュニティ、複数の人間関係を築くことは、一つのコミュニティに依存することを弱め、精神の安定につながる。
コロナの流行の前は、よくバスや新幹線で遠く離れた都会に行って、心を癒してきた。いろいろな場所に行って、いろいろな人と関わって、日々のストレスを晴らしてまた日常を頑張ってきた。でも、今はそれもできない。この小さな街に閉じ込められて、日々神経をすり減らしている。
このままだと本当に心が崩壊する。どうしたら良いものか。