好きかもしれない人がいる。
絶対に好きになってくれない人だ。
格好良く、皆に等しく優しい、わたしには手の届かぬ人だ。
わたしはまともな恋をしたことがない。
手酷く振られたり、告白の返事代わりにいじめにあったり、付き合ってくれたかと思えばすぐ振られ、理由を聞き出すと罰ゲームだったりした。
恋をするべきではないのだと思う。私には向いていないし、勝算もない。
それに、迫る受験のためにも、絶対にいま心を乱すことはしてはならないと感じる。
わかっているはずなのに、惹かれているのが心底辛い。
誰にでも優しいの優しさを、履き違えて苦しい。
ブスは今まで優しくされたことがないから、優しくするとすぐ落ちて迷惑、なんて笑われているのを、耳にしたこともあるのに。
諦めたい。ほんとうに、諦めたい。
嫌いになりたい。
存在を忘れたい。
優しくしないで欲しかった。
というか、わたしはなんでこんなにブスなんだろう、いや、ブスだとされるんだろう。
なんでこんな顔の皮膚一枚の上の造形で、人生を損なわれるんだ。
生まれつき変えられず、努力の余地もない顔の造形という概念が、人を判断する基準になり得ようか。人を愛する基準になり得ようか。
ただ与えられ、享受しているだけの顔貌のうつくしい人間が、なぜ愛されるのか。なぜ崇拝されるのか。
努力して勝ち得た成果を持つブスなど眼中にも入れないというのに。
人間って、ほんと馬鹿なんじゃないのか。