これからの人生を生きる中で、あの頃に戻りたいと思うことがあるとすれば、それは今だと思う。将来の俺は、今を思い出して、懐かしむのだろうな、ということ。そのくらい今、濃厚な時間を過ごしている。
別に、今がそんな幸福で満ち足りたものというわけではない。むしろ、傷付いて、ボロボロで、疲れ果てて、死ぬ気力も生きる希望も感じられないほどだ。
でも、そんな時期だからこそ、大切な仲間と過ごす時間が、楽しくて仕方がない。辛いはずの時間が、幸福なものに変わるほど。信頼できる人達と、多くの時間をともに過ごすことの、この緊張感の中の安らかさ。
だけど、俺にはわかる。今が永遠に続かないということが。俺が今心の支えにしている仲間との絆は、時が過ぎることに形を変えていくということ。今をどんなに大切にしたって、保存して未来に持って行くことはできないということ。
別に、過去を懐かしんで生きていきたいわけではない。だけれど、長く生きていれば、きっと将来、いいようのない孤独に包まれる時があるのだと思う。そんな時、今を思い出して、懐かしむのだろうな。まるでコーヒーの底に沈んだ砂糖のように、暗くて苦くて甘い思い出として。