連休に帰省した息子。配属先が遠方なので、入官してから滅多に帰ってこれない。
久々に我が家に帰り俺の顔をみるなり目を真っ赤にした
「こったに…痩せて…」
震えた声色で最後の方が聞き取れなかった。
せっかく帰ってきた息子…しみったれた空気を作りたくないのと、息子に強がりたかった気持ちがあり
「やせたべ?メタボ解消だ!もてるんじゃね?」とおどけてみせたが息子は荷物を持ちながらうつ向いてしまった。
「お父さん…」
「いいからいいから、まず荷物おいてこい、疲れたべ、着替えてゆっくり休め。」
「うん…」
息子は二階の部屋に荷物を置きにいった。
妻が息子の後を着いていき、二階でなにやら嗚咽が聞こえ、妻がなだめていた。
聞き耳を立てていたワケではないのだが、やはり妻と息子のやり取りが聞こえてくる。
「おら…顔みせれないから…おら…帰ってこれ…おらさ…お父さんと…」
「おめぇ…泣いてらんねんだ?、な?お父さん、おめぇと最後かも知れないけど、出来るだけいい顔してあげよ?な?」
「うん…うん」
息子の嗚咽と妻の宥めが心をえぐった。
次男が図書館から帰ってきて
「あれ?にっちゃは?」
「今上にいるけど、いくなよ」と念をおした。
嗚咽の欠片を聞いた次男は察したように頷き、自分の部屋に行った。
15分くらい過ぎただろうか…長男が降りてきた。
「お父さん今苦しいか?」
「正直に言えばな…しても、お前の訓練や任務に比べれば…」「今仕事のはなしでねぇのさ」
かぶせ気味に言葉を割って
「今、どんだけ苦しいの?もうダメなの?肺取ったりしてもダメなの?」
と、矢継ぎ早に聞かれた。
「おらの貯金みんなやるし、隊から金、ローン組めるから、移植とかなんともなんねぇの?今から医者変えれねぇの?ステージ3でも4でも治せる可能性ある病院あるべさ。おらなんとかするから移ろう!!」
「……」
「移植必要ならおらやるし…」
「こら!いい加減にせい!おめぇなんの為に自衛官なったのや?ドナーなったらおめぇ辞めないとダメになるべ?なんの為に訓練してるんだ?なんの為に自衛隊入ったのや?あぁ?」
息子は普段の理路整然とした口調ではなく、少し取り乱したような口調だったので、俺も少し穏やかさを忘れてしまった。
「………」
「でも…がとうな…ありがとうおらぁ幸せだ」息子を抱きしめた。
息子は大泣きして俺よりデカイ体で俺にしがみつき二人で泣いた。
「さぁ、風呂入って、一杯のめ…な?お帰りなさい…な?…」
「お父さん…ごめん」しばらく泣いていた。
息子たちは優しい。それゆえに辛かった。
しばらくして、次男が降りてきた。
「にっちゃは?ふろ?」
「うん」
しばらくして、風呂から上がった長男は次男に「おう、頑張ってるか?」と頭をポンポン撫でた。
「お帰りなさい」次男ははにかんだ笑みで長男に答えた
さすがに弟には泣きべっちょは見せられないと思ったのか、いつも通りの長男に戻っていた。
次男からみたら、長男は強く優しい兄であり、兄弟喧嘩はほぼなかった。
小さなころから、次男は長男にチョロチョロくっついていた。
「◯◯、話しあるから飯食う前にちょっと出るぞ、お母さん、車借りるよ」
「気をつけてな」
長男と次男が出かけた。
妻と話をした
「さっき、暫く降りて来なかったけど、大丈夫だった?あれ?」
「…大丈夫なワケないじゃな…、家帰ってきたら自衛官じゃないんだよ?なしてもっと話し聞いてくれないのさ、あんたの事心配で心配で仕方ないんだよ?…みんな心配で仕方ないんだよ?あんた失いたくないって、みーんな思ってんだよ?」
「……」
返す言葉を見つけられなかった。
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ななしさん
息子さんのきもち、いたいほどわかります。
パパさんを愛しているから
私のパパは 胃がんでした。
死んじゃったけど、最後のお別れはできませんでした。
自衛官ってかっこいいですね。大震災の時も、自分の家族が被災したとしても、死んじゃったとしても、被災した人の救助を優先したと聞きました
本当は辛いでしょうね。
だから、息子さんもすごい辛いかも知れないけど、パパさんと最後のお別れできないかもだけど、今の連休でいっぱいお別れできたなら、心の悔いはないと思います
私も、パパと残った時間いっぱい話しました。いきなり死んじゃう人よりも、お別れをゆっくり出来たのかな?と思ってます
のりさんが、助かってくれるのはもちろんそれが一番の願いだと思います
でももし天国に行ったとしても、家族のみんなはいきなり死んじゃう人よりも心の準備はしていると思います
でも助かって欲しいです。息子さんの言う事にも耳を傾けてくれれば 助けてくれる病院があるかも知れない のりさんも 息子さんに助けさせてあげて下さい 助かってくれるならすごく嬉しいし、もし天国に行ってしまったとしてもパパのために頑張れたと悔いはもっとなくなると思います。
長くなってしまいましたね、すみません。
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