この夏はあなたが私にたくさんの思い出をくれたのに。
夏が終わると一気に蝉が泣き止むように、あなたの手も私の心から離れてしまいました。
あの日、私が泣いて愚痴ったのが原因なのかもしれないですけれど。
あの後に一度だけ私から手をのばしたのに。
振りほどかれてしまいました。
あなたの少し分厚くて、暖かな手がまだ忘れられません。
私の冷たい手は、これから寒くなるほどにあなたの手を欲しそうなのに。
手をのばせば届きそうな所にあるあなたの手。
近いのに遠いです。
怖くて、もう一度手をのばすことができません。
そんな私にあなたは今日も無邪気に笑いかけては、面白いね、可愛いね、って語りかけてきます。
あなたの気持ちがみえません。
もういちどだけ、勇気をふりしぼって。
この手をのばすべきなのでしょうか。
あなたの温もりをまた感じたい。
届きそうで届かないこの手。
のばしてみましょうか。