何を期待して生きていればいい？高校の頃までは、漫画家になることを目標に夢を心に抱いて生きていた。母子家庭ながら

何を期待して生きていればいいんだろう。

高校の頃までは、漫画家になることを目標に夢を心に抱いて生きていた。
母子家庭ながら兄ふたりと私の暮らし、不自由はしなかった。
同性で片想いだったけど、好きな人もいた。
本音を話せる、たくさんの友達がいた。


ところが、19の初夏頃 母ががんになった。
その頃私は漫画家になるべくバイトをしながら、持ち込みと投稿を重ねて小さな賞をもらい
担当さんとやっと二人三脚を始めようという所だった。

母のがん、闘病生活を支える暮らしは想像よりきつかった。
睡眠時間や描く時間、体力を母のために献身するのはまだいい。
だけど、その甲斐なく母の体調はどんどん悪くなり
その苦しみを間近に見ることがとても苦しかった。
何も出来ない自分が本当に恨めしかった。

友達と遊ぶ時間もなく、心が疲れていたことから
誘いを何度もすげなく断っていたら、ほとんどの友達と疎遠になってしまった。

長兄はニートで、母の貯金と、社員として働く次兄と自分のバイト代で、家庭と入院費を回した。
そんな生活が続いたからか心が摩耗して、何も描けなくなった。

私が20歳になった年の5月に母は旅立った。
まるで成人するのを見届けるまで頑張ってくれたかのようなタイミングだった。

それから、兄ふたりと私の暮らしが始まった。
長兄が働いていないことで、次兄との仲は冷え切っていて
私が2人の仲介をするような立場になっていた。
その中で、相変わらず何も描けない日が続いたけれど、なんとか再起しようと絵のリハビリをした。

ところが、母が亡くなった翌年の秋、今度は次兄が白血病になった。
今度は兄の貯金と私の少し増えたバイト代とで家と医療費を回した。
せっついてもなだめても長男は働こうとせず、お金のない私はお昼を抜いて朝から晩までバイトをした。
そんな状況で描けるはずもなく、絵のリハビリもやめて死にものぐるいで生き残ることだけを考えた。


白血病の発覚した日から翌年の3月、次兄も旅立った。
23になった私の手元には無力感と、寂寞以外、何も残っていなかった。
「もう頑張りたくない」の思いしかなかった。
ここまで頑張っても何も報われなかった。だったら、残りの人生は何も頑張りたくない。
ふらふら生きて、行き詰まったら死んでやろうと考えた。
勝手だとは思うけど、そんな私を叱る母はもういない。
こんな長兄を支えなければいけない義理もない。

最初の最初に少し書いたけれど、私は同性愛者で女性しか好きになれない。
それも、全く望みもない高嶺の花みたいなタイプしかいつも好きになれない。
はじめっから結果わかっているような人しか愛せなくて、恋愛についてももう諦めている。

そんなふうに生きがいも夢もなくなったのだから、好きにさせて欲しかった。

けれど、まだ祖母がいた。
娘と孫を自分より先に亡くして、悲しみの中から抜け出せていない。
そんな祖母を残して、私まで死ねない。

その一心で、自殺を踏みとどまって 25の今まで生きている。
相変わらず頑張りたくはなくて、まだバイトだけで兄と自分の家計を賄っている。
正社員になりたい気はさらさらない。
根無し草で死にそうになったら死ねばいい。
祖母が生きている間だけ生きていられればそれでいい。
もう何も頑張りたくない。


けれど、ここまで書き連ねておいて、今更だけど
私だって、積極的に死にたいわけではない。
生きていられるのなら生きていたい。

でも、祖母がこの先亡くなったら、その先は？
これから先、何を期待して生きていればいいんだろう？
生きる意味ってどこにある？
母も兄も、あんなに必死に生きるために闘ったけれど掴めなかった。
それなのに、私はこうして、無駄に生きている。
その事実だけで泣きたくなる。

人はいったい未来に何を期待して生き長らえればいいのか
生きる理由も死ねない理由もないまま、生きていていいのだろうか。