正しいことを正しいと、胸を張って言える人こそが幸せになれる
その言葉を信じていた彼女は、もういない
家族がみんな元気なら幸せじゃない
夢なんてそこら辺に転がってるじゃない
目的や目標をハッキリ言えばいいじゃない
泣いていたら誰にも伝わらないじゃない
そう言って怒った彼女はたしかに正しかったと思う
でも、彼女の言葉に当てはまる人ばかりではないことを、彼女は知らなかったのだろう
父の日に一人似顔絵を描けなくて怒られ、意味が解らず「パパってなに?」と聞いた時の先生の顔や、一人教室から出されて「片親で可哀そうだから仲良くしてあげましょうね」と説明する先生の顔が見えなかったんだろうし
夢を抱けるほど、何かを好きになれる人としか出会わなかったんだろうし
言いたいことを素直に伝えれたり、自分のなすべきことを理解している人たちの中にいたのだろうし
涙腺の緩い人なんて見たことがなかったんだろう
…多分、私がはじめての例外だったのだろう
でも、世の中には例外がたくさんある
自分を傷つける人が信じられない、自分で幸せを潰す人たちが理解できない
そう言った彼女の目は私を見ていたし、私には彼女の表情に浮かぶ落胆と嘲りが見えていたけど
私は特にそれを指摘することもなく頷いていた
私にとって彼女はスーパーマンのような完璧な正義側の人間で
彼女にとって私は落ちこぼれで不器用なやられ役だった
だけど今、私はボロボロのよれよれでも生にしがみついていて
彼女はぼろぼろに壊れていなくなった
家族もあって、夢を語って、すべてが正しいと信じて前を向いて努力していた彼女
実らない努力を努力とは言わないと、脱落者たちに吐き捨てていた彼女は夢を叶える前に身体を壊された
壊した側に悪意があったわけじゃないが、その罪は許されるべき領域でもなかった
彼女は言った
実らない努力を努力と呼べないなら、私は今まで手を抜いてきたのだろうか?
私はその場にいなくて、彼女を今まで導いてきた人はすかさず叫んだそうだ
そんなことはない、また頑張れば違う生き方ができる
それを聞いた彼女は静かに泣いて…自分の幸せを潰す決断をしたそうだ
「アンタは良いわね、ずっと自由で」
彼女はそれだけ言って飛び降りた
私は彼女の欲しかった言葉を完璧に言えたと思う
でも、彼女は私が正解を答えられると信じられなかったのだろう
正しいってなんだろう?
そう言った私を笑った彼女はもういない
――けっきょく、努力したって運が悪けりゃ報われないさ
その言葉を否定した彼女は、もういない
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【小瓶主さんからお返事きたよ】
彼女は確かに厳しい人でした
自分の物差しでしか人を測れないような人でしたし、自分のレベルに達していない人間には同情することも憐れむこともなかった
努力すれば必ず結果がついてくる、結果がついてこないものは努力が足りないからだ
彼女はずっとそう信じていたし、他の人にもそれを求めて強要していたのも事実です
でも、だからこそ自分に自信があったのだとも思います
正しいと断言できる人間は強いです
私にはできないことを、息をするように当たり前に行う彼女はとても強かったです
彼女は出会った時から大きくて堂々としていて、周りの中心に立って輝くような人で、私はそんな彼女から早々に見限られた立場の人間でした
私は彼女を羨ましく思うことも妬むことも、そして嫌うこともなく眺めているような子供でしたが、大人になる少し前から交流がなくなっていました
彼女はいつも正しい道を胸を張って大股に歩いていましたし、私は人目を避けて路地裏をこそこそ隠れながら進む人間だったので、いつの間にか彼女の背中が消えてしまっても驚くことじゃなかったので、彼女からすぐに来いと連絡が来たときは「どうして連絡先を知っているのだろうか?」と首をひねるくらい驚きました
そして彼女はボロボロな状態で、自分の人生が無意味だったと言って笑っていました
私の人生はお世辞にも良いとは言えません
親戚からは「お前の人生は昼ドラみたいだ」って言われますし、知り合いからは「手記を書くなら2冊は軽い」と言われるくらいには普通とはかけ離れた生い立ちをしているそうです
一人の時間の方が長く、拒絶されては我慢するような幼少期を見ていたハズなのに、彼女はそんな私を見て自由だというくらい、壊れていました
…彼女が本当の意味で私を見ていなかったから言えたのかもしれませんが
彼女が壊れた原因は不幸な事故です
周りでは自業自得や天罰という人も確かにいましたが…
私は彼女が間違っていたとは思えないんです
彼女はそれだけのことを言えるだけの実力があったし、手に入れてきた実績だってあった
だから否定されても仕方がないと思えたし、嘲笑われても傷つかなかったんですよ…飛び降りる前までは
彼女は多分、人を信じすぎたんだと思います
裏切られたと感じるのは、その人を信じたから
信じなければ裏切られないし、期待しなければ傷つかない
私みたいに飄々としていれば、そこまでの落差は絶対になかった
傷つかないことを彼女が自由だと思ったなら、私はそれだけは許せそうにないです
今まで蔑んできた人間の生き方を羨むより、私を見てこれより下にはなりたくないって這い上がってくれた方がずっと良かった
過去の私が傷つかないと思えたことが、傷つくのが当たり前だって言われたみたいで…
周りから裏切られたと感じるくらい信用できるだけの時間があったのなら、私の言葉を聞く時間だって絶対にあったでしょうに
彼女のせっかちな気質だけは、昔から嫌いだったと断言できますね
ななしさん
嫌な事言うけどその人はいずれはそうなる運命だったと思います
そんな思考回路じゃ生きづらくなるのは当たり前だし、
その人は今まで周りを傷つけながら生きてきたんだから、
それが自分に返ってきただけなんじゃないですか?
第三者から見たら、あんまり同情はできない。
・・だけど、客観的に見たらものすごく
嫌味な人のように思えるけど
あなたにとっては
(他人を見下しながら生きていたような人でも)
憎めない奴だったのかもしれないですね。
あなたの文章から、そういうのが伝わってくるから。
あなたはその人のことを憎んでいるわけでも、
死んでほしいと願っていたわけでもなくて。
きらきら輝いていた人が
壊れてしまうのって、なんか・・・
なんとも言えないですよね。
今まで信じていたものが、一瞬にしてなくなってしまったみたいな
結局あなたにかける言葉は見つからなかった。
頑張りすぎちゃったのかな。
世の中理不尽なことばかりで、思う通りにならないもの。
汚いことだっていっぱい。仕形のないことだっていっぱい。
抗うだけ、余計に辛くなる。
自分に厳しい人だと、他人にも厳しくしちゃうもの。
色んなものを許せなかったのかもしれないね。
けど、分かってくれる人もいるよ。
それを便りに、今日も生きましょ。
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