私達は、緩やかに死んでいく。寿命だとか、そういう話ではない。
私達は、思い出で構成されている。
人間はどうしても、その構成部分を忘れていってしまう。
だから私達は、緩やかに死んでいく。
1.自分殺し
私の名は『翼』。普通の大学に通って、バイトをして、日々を浪費し続ける大学生という、なんともつまらない経歴の持ち主だ。
実のところ、私には大切にすべき思い出が一つもない。理由は単純で、私が消したのだ。この世界には記憶を消し去ってしまう技術、『レーテー』というものが存在している。過去の私は、それを使ったらしい。
正直、今の私は「ものすんごいお金をあげるので、レーテーを使ってくれませんか?」なんてことを言われても使いたくないくらいに苦しんでいる。
家族がいたことは覚えているし、友人たちのことも、後輩、先輩達のこともちゃんと覚えている。だからこそ、尚更キツイのだ。
例えば、友人達と話をしていたとしよう。その話の中で、友人の一人がふと、記憶を消してしまうより前の思い出を話す。
例えば遊園地に行った時の華々しい記憶、或いはコンビニに行った時の些細な記憶。
そのどれもが、私には全くわからない。
友人達が「この前こんなことあったよな!」なんて楽しく話しているのを聞きながら、「ああ、そういうことがあったんだなあ」と感じることしかできないのだ。
そんな風にしていると、段々と記憶を消したことを後悔する。果たして本当に、私の思い出は消して良かったのか?今の私は、本当に私なのか…?と、どうしようもなく疑ってしまい、遂には鬱になってしまう。
友人と話すのが怖い、もはや他人とも言える家族に大切にされるのが怖い。
そんな風にしているうちに、私は肉親からも、かつての親友たちからも見放され、どんどんと孤独に陥っていった。
お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
すごくやさしい言葉をかけてあげてほしいです