子どもの頃から、ジェットコースターが大の苦手だった。
落下のときのあの“ふわっ”とした感覚がどうしても怖くて、自己紹介カードの「嫌いなもの」には必ず「ジェットコースター」と書いていた。
それほどまでに嫌だったハズ
きっかけは意外なところからだった。
ある日、中央道を走っているときに見えた、富士急ハイランドの「ええじゃないか」、その異様な高さと複雑なレールの構造に、ふと機能美を感じたのだ。
それからは気づけばネットでジェットコースターの仕組みや歴史を調べていて、あれほど嫌いだったのに乗りたいなと思うようになっていた。
とはいえ、いきなり「ええじゃないか」に挑む勇気はない。
調べているうちに、ジェットコースター入門機として評判のよみうりランドのバンディットという存在を知った。
急がば回れ、私はバンディットのプラットフォームで心臓が弾けそうになっていた。緊張で呼吸が浅くなり、乗る前に逃げようかと本気で考えた。
安全バーがロックされ、動き出したらもう後戻りはできない。
巻き上げの最中、僕はずっと目をつぶっていた。
後ろの席の若い女の子たちが「高〜い!」と笑い合っている声が聞こえる。彼女たちがまるで別世界の住人に思えた。
そして、ついにファーストドロップ。
「もう、なるようになれ」と腹をくくった。
落下の瞬間、確かにあの浮遊感はあった。
けれど、子どもの頃に感じた苦しいという感覚とは違っていた。身体の力を抜いて声を出すと、不思議とそれが心地よさや快感へと変わっていくのを感じた。
初めて鉄棒で逆上がりができたとき
初めて縄跳びで二重跳びができたとき
初めてスケボーでオーリーができたとき
初めてバイクで膝を擦ったとき
そんな、恐怖の先にある爽快感の感覚を久しぶりに味わった
もともと車やバイクが好きで、サーキット走行の経験もあるのでスピードやGは得意なほうだ。
それでも、水平ループでかかる遠心力は想像をはるかに超えていた。
サーキットで速い人の横に乗っても感じたことがない、凄まじいG。
ブラックアウトって、こういうことなのかと思わずにはいられなかった、感動した
降りたとき、僕は少し違う自分になっていた。
子どもの頃、「苦手」と決めつけていたものの中に、こんなにも豊かな体験が隠れていたなんて。
「怖いからやらない」と思っていたことの中に、人生を少し豊かにしてくれる体験があるのかもしれない。バンディットは、僕にとってまさにそんな存在だった。
次は、どこへ行こうかな何に乗ろうかな。
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