電話を切って、自室のベットに飛び込んだ。
「はぁ…。」
ため息が止まらなかった。
会いたいと言ってきたのが明來だとしても、一度傷つけた相手に会うのは怖い。
僕は、一度間違えてしまったのだ。
これだから、自分の意志で歩きたくなかった。
親や周りが敷いたレールを走っていれば、間違えることはない。
でも、いつかこのレールは途切れる。その前に、自分の力で歩まなければならない。
分かってる。分かってるんだ。
悶々としているうちに、眠気が襲ってきた。
あぁ、まだ何も考えがまとまっていないや。何か、何か答えを…。
「―アルビナに、会いたい。」
「起きて。瑠唯、起きて。」
優しい呼び声で目が覚めた。
「アルビナ…?」
「ええ。…ねえ、私、まだ話足りない。だから、いっぱい話そう?」
その健気な笑みが、とてつもなく辛かった。
だからこそ、アルビナの期待に応えてやりたかった。
「あぁ。今夜いっぱい話そう。」
どうでもいい話をたくさんした。でも、何故かそれが楽しかった。
「ごめん。」
突然、口をついて出た。純粋な語りぶりに、謝らずにはいられなかった。
「謝らないでよ。私、楽しかったんだからさ。」
アルビナは、底抜けに優しかった。その優しさが、痛かった。
「でも、やっぱりもうちょっと生きたかったな。」
「…なあ、俺。」
決意を固め、口を挟んだ。
「俺、アルビナとの約束、絶対守るから。『世界中の人に戦争の辛さを知ってもらう』って約束。」
こんな口約束、信用してくれないかな。あんなに酷いこと言ったもんな。
でも、これは本気だった。信じてほしかった。
アルビナは何も言わず、すっと小指を差し出してきた。
「日本の文化よね。嘘ついたら針千本のーます、ってさ。」
俺も、小指を出した。指が絡まる寸前、今度こそ目が覚めた。
夢を見ていた。都合の良い、夢だった。
行き場をなくした小指を戻した。そのまま拳を胸の前に持っていく。
もう一度、俺は自分の意志で歩かねばならなかった。一生消えない罪を背負って。
そのためにはまず、あいつに会わなければ。
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