あなたに言えなかったことがあります。言えていたら何か変わっていたかもしれないことがあります。
嫌いとか信じていないとか言わないで、素直に言えばよかったはずなのだけど、それを言ったら何かが終わる気がして、けれど言わなかったから全部終わったんだと思います。
12月の終わりに一度揉めたあと、話す頻度が下がったのがつらかった。それ以前は毎日だらだら喋って夜を過ごしていたのが、2日や3日に一回になって、一日頑張って帰ってきても今日あったことをなんでも話せる人がいないことに肩を落としていました。
あなたはペアリングを買って、近くに住んでいた他の友達とも会って、そういうことを楽しげにネットで報告して、あなたと直接会えない距離に住む私は置いていかれるような気がしていました。このまま忘れられるときっと本気で思っていました。
その危機感から私はあなたの気を引きたくて攻撃的な態度を取り続けたに違いありません。そうしたら心配してくれると思ったから。でもそんなことをして嫌われないわけはなく、実際そうでしたね。
あなたになにも腹が立つことがなかったわけではありません。年賀状を送ったときに返事を書くと言っておきながらやらなかったことや、どうしても嫌なことを言ってしまうから距離を置くと言った際に、きっといつかどうでもよくなるよなんて楽天的で真剣みのない返答をされたこと。嫌だったけれど、でもいま思えば、あなたはそういう行動をすることで私と縁を切る気であったのではないかと、そんな気がするのです。
ただ一言、寂しいと言えていたら、何か違っていたでしょうか。話せなくてつらいと、会えなくてつらいと、そう打ち明けられていたなら。そうしたら今も私はあなたの友人でいられたでしょうか。そういうことをここのところ毎日のように考えています。考えたところでなんの意味もないけれど。
いつか、私が大人になったら一緒に暮らそうと約束しましたね。私はあの日から、あなたのいる日々を待ち望みながらずっと過ごしていけると思っていました。未来に希望を見ながら明日へ進んでゆけるんだと。そしてその日が来たならば、私はどんなに幸福な家族の中で暮らせるだろうかと。
だから今の私は未来に何も希望を持てず、しかしそれは世界が間違っているのではなく、私が間違ったから起きた当然の事象に過ぎないのです。ただ私が世界に置いていかれただけなのです。
血の繋がりはなく、結婚しているわけでもなく、ただただ自分にとって大切な人であるというだけの赤の他人と生活を共にすることは今でも私の憧れで、でもたぶんそれはもう叶わないような気がしていて、毎日テレビを眺めていいなあと漏らすだけの毎日です。私は何も変わらないでいます。架空の誰かに勝手にシンパシーを感じてああなりたかったと思うだけの、そういう人間のままです。
私はなぜか昔から、人に話しかけても手応えを感じられないことばかりでした。たくさんで話していると何か発言しても誰にも聞こえていないのがお約束で、そのうち話題についていけなくなるのが普通だった。でもあなたは私が何か言いかけるたびちゃんと気づいて拾ってくれて、だから私はあのときあなたに救われていたのです。私の声はあなたにならちゃんと届くことが嬉しくてたまらなかったんです。
あなたはきっと誰からも愛されて幸せになるべき人間です。もうすっかりあなたは何も怖くなくなっていて、こんなこと言う必要もないかもしれないけれど、あなたには太陽の下で笑って生きていてほしい。
これはあなたに届くでしょうか。広大なインターネットの海に流したこれがあなたのもとに流れ着くとは到底思えませんが、もしあなたがこれを読む日が来たならば、くれぐれも返事はしないでほしいのです。もしかしたら私はあなたが許してくれることを期待しているかもしれないから。あなたが私に時間を割く必要はありません。
さようなら。大切でした。あなたと一緒に帰りたかった。
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