母へ

何故忘れてたんでしょうか。
覚えてることが辛くて、きっと心にしまい込んでしまったんでしょうね。
私が小学生の頃、いつものように父が些細なことで貴女に怒り、喚き散らしだして、深夜にもかかわらず酷い喧嘩でしたね。
あまりに酷いから、姉がそれを止めようと乗り込んで行ったら父に酷く怒られて追い出された。
隣の部屋で私は早く収まるのを待つしか出来なくて、そこに戻った姉がおばあちゃんを電話で呼んだんです。
私はそんなことしたらより酷くなるから止めたのに。
おばあちゃんは深夜にも関わらず、車を飛ばしてきました。
私は外で待ってて、入らないように止めたけど、おばあちゃんは娘である母のことが心配だからそれを振り切った。
その後、おばあちゃんがしばらくウチに来れなくなったのは貴女も覚えてましたね。
でもその後、予想通りより激昂した父が誰が呼んだと、連れて来いと言って私が連れて行かれたのは覚えてなかったんですね。
貴女が私に姉の代わりに私がやったと言ってと頼んだんですよ。
姉は先に一度止めに入って怒られているから、姉がやったと言えば殴られてしまうと。
私は姉の代わりに怒られてあげましたよ。
何を言われたか、昔から怒るたびに誰のおかげで学校に行けるだの、生活できるんだだの、言われすぎて覚えてませんが。
私は貴女が大好きでした。
普段から父に習い事を姉と比べて下手だの、体型を豚だの、心が傷つくばかり言われても、貴女は庇ってくれて愛してくれたから。
でもずっと心のどこかで姉ばかり贔屓されてると思ってました。
最近些細なことで姉と揉めたこと、その一場面だけで姉の言い分も尤もだと言ったけど、そのせいで昔のこと、思い出してしまいました。
思い出したくなかった。
貴女に愛されてなかったんじゃないかって、思いたくなかった。
そんなことない、どっちの方がとかではなく同じぐらいずっと愛してきた、なんて信じられるわけないじゃないですか。
じゃあなんで私はあの時姉の身代わりにされたんですか。
私の方が悲しいのに、悲しい顔しないでよ。
私の方がずっと悲しかった。
それに貴女は覚えてもなかったじゃないですか。
今までの楽しかった思い出や愛された思い出は全くなかったことになったのかって、悪いことしか覚えてないのって、良かったことも覚えてるから辛いんじゃないですか。
また前のように裏切られるんじゃないかって恐いんじゃないですか。
大好きだったけど、今は大嫌いです。
またいつか、なんてもうありません。
もう少しでさようならです。
元気でいて欲しいって、それだけ願ってます。