悪く言えば洗脳だった。
一人暮らしを始めて知った、私は母に依存していたし母もおそらく私に依存していた。
誰と仲良くするか、アルバイトはどうするか、夜ご飯はどうしようか、部活は、今日の予定は、そんな簡単なことが自分で決められない。
だって、今まで全部母に決めてもらっていたから。愛だったのはたしかだけれど。
どうしたい?と聞かれたら、真っ先に母の顔色を伺っていた。
今日は疲れてるかな、今日は私に優しくしたい日かな、今日は余裕のある日かな、全部わかってたわけじゃないけど、大体わかって、それでから言葉を選んでいた。
母はよく言った、「〇〇といると気楽ね、私の考えていることが手に取るようにわかってるんだもの」。当たり前だった、毎日顔色を伺って空気を読んで暮らしていたから。
愛されていた、でもそれは条件つきだった、母を怒らせたら捨てられるんじゃないかと小さい頃から本気で思っていた。
今でもそう。母の理想通りの娘でないと、きっと嫌われる。ありのままのあなたが好きなんて言ってくれるけど、本当の私のことは別に好きじゃないんだと思う。
証拠が弟。彼は不登校児だった。母は仕事を休職してどうにか弟が学校に行けるよう、手取り足取りサポートしていた。やっぱり学校に行かないような子は、真面目じゃない子は、普通に生きられない子は、嫌いなんだ。
今誰のために頑張っているのかと問われたら、「母のため」だと思う。不健全。でも、母からも嫌われてしまったら、私のことを愛してくれる人なんて誰1人いなくなってしまう、それは嫌だ。
いつかはちゃんと結婚して、子供を産んで、親孝行をして、母の理想通りのかわいい娘であれるよう頑張る。それしかやることがない。