あれい さんへ。
いろいろと考えたけど、もしかすると偶然じゃないのかも、なんてね……。
あれいさんも、そう思える日、というか、そんな気持ちが自然と心のなかに産まれて、何の気なしに、ふっ、と口から出てくるんじゃないかな。
あの日の思い出、一生忘れない。
定演に来てくれた顔なじみの方たち、付き合いの深かった他校の顧問の先生たちやトランペットパートの子たち、僕が中学1年の4月に入部するきっかけをくれた偉大な先輩とその妹、在部中に急逝した親友(1st クラリネット担当)のご両親、部員の保護者多数ほか、6年間たくさんお世話になった人たちから、労いの言葉、大きな花束やブーケ、お菓子を両手いっぱいに受け取って、部室に戻ったんだ。
そしたら部員のみんなが、僕に内緒で用意してくれてた卒業祝の品と寄せ書きの色紙を渡してくれて、嬉しかったな。
その後も和やかムードで、これは「放課後ティータイム」か? と見紛うような雰囲気の中、2つ年下のトランペットの後輩ふたりが「僕の現在位置さ~ん...」と、半ベソかきながら僕のほうに駆け寄ってきてさ。
「おう、どうした、どうした。」と声を掛けたら、思いが一気に溢れ出してしまったみたいで、堰を切ったように涙しながら、ふたりして「また遊びに来てくれますか?」なんて言うから、「もちろんよ。大学ではジャズバンドに入ってトランペット続けるつもりだし、また帰って来るから心配しなさんな。ふたりとも医学部受験で、来年には休部するんだよな。でも、部活でも他のことでもそうだけど、最後に『あぁ、楽しかった。』と思えれば、それで良いんだ。今の僕がまさしくそうだからね。もう卒業しちゃって、部長でも部員でもないけど、先輩からのラストメッセージってことで。」そう伝えたよ。
その後輩ふたりからは、ブランド物の素敵なネクタイピンをもらったよ。わざわざ都内の百貨店で選んでくれたそう。後日、思いの丈を綴ったメールと手紙が届いた。すごく嬉しかったし、恵まれた学校生活だった。
余談だけど、かつて就職活動のときに「最後になりますが、これまでの人生で、あなたの心がとくに強く動いたエピソードがありましたら聞かせてください。なければ結構です」と訊かれたことがあった。
「え……、両隣の学生にはその質問してないじゃん! これが俗に言う抜き打ち検査か!」と内心、狼狽しつつも、咄嗟にこのエピソードを時系列で組み立てて話したのが、内々定の出た2社だったりする。
僕が入社を決めた方の会社の面接担当者も、女性が何人か居たけど「もし私が同じ立場でしたら、正直に申し上げて、部員の皆の優しさにホロリと来ますね...」と言ってた。
あれいさん、大丈夫!
誰かが貴方の背中をそっと見ていてくれるよ。
「あぁ、先輩みたいに、自分も強く優しくありたいな……!」って、思ってくれる後輩も、必ずいるから。
不安な時は、先輩たちから受け取った心のバトンを握りしめて。それが御守だよ。
愉しんで!
僕の現在位置より