たとえば、にんじんが星型だったとか。
今日の晩御飯がハンバーグだったとか。
たまにあった外食だとか。
お利口に待っていたら読んでもらえた絵本だとか。
犬の散歩を見かけただとか。
野良猫を見つけただとか。
思いっきり走り回っただとか。
綺麗な星を見ただとか。
そんなことでワクワクして。
毎日、明日という一日が来ることが楽しみだった。
好奇心で溢れて。
冒険で怪我して。
喜怒哀楽の感情で溢れてた。
そんな時期のたった一つの思い出。
いつものように家事をそつなくこなす母と誕生日が来て嬉しい私。
たったそれだけの事が嬉しかった。
話しかけてちゃんと答えてくれることが嬉しくて。
何歳になったのかを幼稚園に入る前の私が足りない頭で必死に数えてた。
そんなある日のことをよく覚えてる。
それだけは、はっきり思い出せて。
ケーキだとか、プレゼントだとかよりも嬉しかったのだろうなって思う。
母が好きだった。
それは過去形で、また好きになるのかもしれない。あるいはならないのかもしれない。
分からないけれど、あの日の記憶は。
暖かかった。