あの日もいつもと同じでつまらない日だった。
いつも通りの日常。
いつもと同じ帰り道。
ただ、一つだけ不思議なことがあった。
「もし、生まれ変われるなら何になりたい?」
後ろから声が聞こえた。
誰かのいたずらか?
まぁ、なんだっていいか。
内心呆れげに僕は答えた。
「僕は猫になりたい」
「どうして、猫になりたいの?」
また、声が聞こえた。
心底不思議そうな声だ。
なんでってそりゃ猫は自由だからさ。
それ以外に理由なんてないよ。
僕はこの不自由な世界から逃げ出したいんだ。
「不自由な世界?」
あぁそうさ、不自由だよ。
僕には友達が沢山いるけれど、高校を卒業したらもう会わないだろう。
だって僕は誰とも本心で話してないからね。
適当に話を合わせて、みんなと同じように笑う。
何が楽しいんだよ。
「どうしてそんなことをするの?」
は。
そうでもしないと異端だって省かれるんだよ。
いいか、人間は自分と違うものを認めないんだ。
だから不自由なんだよ。
「楽しくないの?」
ああ、楽しくないね。
誰の前でも仮面を被らないと生きていけない世界なんて。
親の前でも、教師の前でも、クラスメートの前でも、
違う仮面を被って生きていかないといけないんだよ人間は。
「どうして嫌なのに仮面を被り続けるの?」
望まれる自分じゃないと必要とされないからさ。
「だから、猫になりたいの?」
そうだよ。
自由になれるならなんでもいいけどね。
「猫になれたら幸せなの?」
「人間をやめたら幸せになれるの?」
…そんなこと知るかよ。
なれるわけでもないんだし。
「本当に自分のなりたいものになれるとしたら?」
はぁ。
さっきからなんなんだよ。
僕をからかってるのか?
いい加減イライラしてきた僕は後ろを振り返った。
そこにはちいさな女の子が立っていた。
「からかってなんかないよ」
「もし本気で猫になりたいのなら猫にしてあげる」
「君が人生を終えたら、ね」
何を言ってるんだこの子は?
面倒くさくなった僕はこう言った。
それじゃあ、もうそれでいいよ。
僕は歩き出した。
「君が人間の魅力に気付けるといいな」
「また、ね」
振り返ってみると女の子はいなくなっていた。
なんだったんだよ。
時間を無駄にした。
急いで家に帰ろう。
いつもならすぐに眠れるのに女の子の言葉が胸に刺さっていて寝付けなかった。
人間の魅力ってなんだよ。
はぁ。
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「おじいちゃん、死なないで」
「お父さん…!!」
「お義父さん」
ああ、僕は死ぬのか。
よく生きたほうだよまったく。
思えば悪くない人生だったんじゃないか?
僕も、今からそっちへ逝くよ。
長い間待たせて悪かったねばあさん。
温かい家族に囲まれながら僕は息を引き取った。
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僕は振り返る。
高校生のとき、帰り道でみた不思議な少女だ。
あのときから何も変わっていない女の子がそこに立っていた。
「どうだった?人生は?」
悪くなかったよ。
大切な人とも出会えたし、子どもにも恵まれた。
「ふふ、仮面を外せる人には出会えた?」
どうだろうね?
本当の自分なんて移り変わっていくものだと気づいたから。
途中からは仮面なんてものは被っていなかったのかもね。
まぁ、流石に必要なときだけは愛想よくしてたりはしてたけどね。
「楽しかった?」
ああ、楽しかったよ。
「じゃあ、人生が終わったわけだけどどうする?」
「そろそろ猫に生まれ変わる?」
いや、いいよ。
というか、わかってて聞いてるんだろう?
女の子は笑う。
そしてあの日聞いた言葉をもう一度繰り返した。
「君はもし生まれ変われるなら何になりたい?」
もちろん答えは決まっている。
僕はこう答えたよ。
「もし、もう一度生まれ変われるとしても僕は人間になりたい」
生きていくのは楽しいばかりではなかったけれど、
苦しいことも、辛いことも、含めていい人生だったと言える。
辛いことを乗り越えるたびに僕は強くなれた。
苦しいことがあってもそれ以上に嬉しいことが未来で起こった。
人生ってのは予測不可能で、面白い。
だからこそ、僕はまた人間に生まれ変わりたい。
「今生よりも辛いことがあるかもしれないのにいいの?」
いいさ。
きっと乗り越えて見せる。
「自由に生きられないかもだけどいいの?」
決めるのは自分自身だからね。
勇気さえあれば人間であったとしても自由に生きられる。
自由を失うのも手に入れるのも生き方次第だってもう学んだよ。
「安心した。もう大丈夫そうだね」
「良い人生を送ってね。ここで見てるから」
人の魅力に、人生について考える機会をくれたことへの感謝をこの一言に詰めた。
「ありがとう」
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これは私が経験したことのないもの。
なのに、はっきりと記憶がある。
もし、これが前世の記憶ってやつなら今の人生も幸せになれるように生きていきたいな。
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読んでくれてありがとうございました。
長ったらしくて、読みづらかったと思います。
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
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ななしさん
はじめまして。つゆです。
そのような事があったんですね。私だったら…、わからない。まだ、生きて、数十年しか生きていないから。
でも、今だったら、もう一度、この人生を歩んでもいいし、新しい人生に進んでもいいかもしれないな。今の人生は、本当に辛くて、死を選んだ時もあったけど、全部いい思い出。新しい友達を見つけた事。運命の人に出会った事。学校のスクリーンを壊して怒られた事(結構デカいやつww)。友達に告白した事。将来の夢を見つけて、必死に頑張っている事。全部いい思い出だった。私が生きた大きさは、他の人からみたら小さいかもしれないけど、生きてきた中で、誰かの気持ちを動かせたなら、それが私が生きた証拠だと思います。
小瓶主さんのおかげで、一回立ち止まって自分を振り返る事ができました。私の気持ちを動かした小瓶主さんの手紙は、小瓶主さんが生きていた証拠の一部になって欲しいです。
私は、いつでも、小瓶主さんの味方です。
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