わたしは嘘つきです
どうしようもない卑怯者です
誰かに怒られることが怖くて、自分ができないやつだとばれることが怖くて、すぐに嘘をつきます
親に嘘をつきました
金がかかると思われるのが怖くて、すぐに仕事に就ける学校に行きたいと嘘をつきました
その職に昔から憧れていたのだと、そのための勉強も好きなのだと嘘をつきました
その職に憧れなんてないのに、勉強なんて好きでもないのに、嘘をつきました
怒られたくありませんでした
嫌われたくありませんでした
あなたに失望され軽蔑され目をそらされることがこの世の何より恐ろしいと思いました
友人に嘘をつきました
ありもしない失敗談を笑って話しました
ない思い出を作って話しました
面白いゲームややり方をわたしが作ったことにしました
何度も何度も噓をつきました
面白みのないやつだと思われたくなくて嘘をつきました
こんなわたしの話でも笑ってほしくて嘘をつきました
嫌われたくありませんでした
はじかれたくありませんでした
どうしようもないわたしを知ったあなたが離れていくみじめさをもう味わいたくありませんでした
わたしに嘘をつきました
はるか昔に見た夢をなかったことにしました
追いかけた先で壁にぶつかるのが怖くて、始まる前に終わらせました
やっぱりお前はできないやつだと知らしめられるのが怖くて、いつかの憧憬を殺しました
どうせ叶うことはないのだから大人になれよと蓋をしました
傷つきたくありませんでした
馬鹿にされたくありませんでした
何も始めなければ、もしかしたらの可能性を抱いたまま逃げ切れると思いました
わたしはきっとこれからもどうしようもない嘘つきのまま、何にもなれない卑怯者のまま生きていくのだろうという確信があります
けれど嘘をつかずに生きていけるほど強くなりたいとも思います
怖くても嫌われても傷ついても、どうにか自分の足だけで立っていられたら、それはすごく格好いいだろうと思います
そうなれたら、もう卑怯者と呼ばれずにすむと思います
とりあえず明日から足を鍛えるために近所を走ります