飢えていました。
太陽が照りつけるサバンナで獲物を狩って、狩って、狩って腹を満たしてもハイエナは飢えていました。
どこかの誰かからハイエナは聞きました。
この世界のどこかに広く青い海があると。
その海は優しさで溢れていると。
ハイエナはどうしてもその海を見たかった。
弱いものが死んでいく世界でそんな桃源郷のような場所をこの目で見たかった。
ハイエナは走りました。
走って、走って本当はそんな海なんてないと思ったりしながらもハイエナはその海が嘘でも飢えを満たしてくれる気がして、走り続けました。
喉は渇き、視界が霞みながらも少しずつ見えてきた青に向かって。
ハイエナが嘘だと思った海はありました。
多くの生き物の必死に生きる様をその海は優しく受け止めていました。
流せれた小瓶を拾い上げ、その小瓶主に向けての他者からのメッセージを見てハイエナは理解しました。
ハイエナの飢えは孤独だったんだと。
そしてこの海は誰かとそういうものを分かち合うためにここにあるんだと。
ハイエナは分かち合いたい。
誰かと孤独を。
そしてその誰かの重荷をハイエナが半分背負いたい。
ハイエナは誰かに必要とされたい。
ハイエナは誰かの力になりたい。