「…H君、ありがとうございます。では、違う人を、では、出来れば女子の人を当ててくれますか?」
よくある授業中の光景。発表した人が次の発表する人を当てる。
大体は仲の良い友達を当てる。当てられたら当て返すなんておふざけがあったりする。
友達がいない私は、当たることなんてないので、ボーッとしていた。
でも次の瞬間。
「じゃあ、潮山さんでw」
……は?
どう言うことかよくわからない。
けどまぁ、当てられたんだし仕方ないかと思って答えようとした時、クラスで変な笑いが起こった。
「いや、なんでだよw」「H、まじ草w w」
「潮山さん、かわいそ〜ww」
何故かクラス中からニヤニヤと見つめられ、当てた本人もやってやったぜみたいな顔をしている。
……またなの??
思えば、中学の時のイジメも、始まりはこんな感じだった。無口で気の弱い私を、わざとこんな感じで当ててきて、答えてるのに、爆笑したり、聞こえよがしに悪口言ってきた。
それを先生たちは「フォローしてあげて皆さん優しいですね。」と誉めた。それから、発表がトラウマになっていった。
高校に入って、私の性格自体はあまり変わらないままだけど、イジメというものはなかった。独りぼっちでも、何も言ってこないし、困っていたら助けてくれたりしてくれた。
その中にはかつて、中学の時いじめてきてた人もいた。
だから、流石にみんな大人になったのかなって、勝手に勘違いしてた。
考えてみれば、最近変な視線を感じるようになっていた。悪口言われてるような感覚。
この一年、忘れかけていた、あの感覚。
「潮山っておかしいよな?」「キモいよな」「またあんなことしてたよ」「アイツ何にもできない」「使えないよな」
「死ねばいいのに」
あの時とは違う。……大丈夫、大丈夫。
そう思ってても、なんか周りの人が小声で話していたりすると全て自分のことではないかと気にしてしまう。聞きたくないのに聞こうとしてしまう。
クラスの友達に授業終わりに聞いてみた。
「Hが、さっき私を当てたのって絶対わざとだよね?」
友達は「……そうに決まってるじゃん。」
「私ってどう思われてるのかな」
「……。」
友達は何も言わずにスルーして、話題を変えた。何か知ってるのかな。だから、彼女なりに気を遣っているのか。
やっぱり何かおかしい。またあの日々が帰ってきてしまうのではないかと思うとすごくこわい。