俺は、親に沢山優しくしてもらいました。なのに俺は、自分にとって都合のいいことばかりを覚えています。物心ついた時から父親に物を投げられ殴られ蹴られ叩かれる毎日でした

俺は、親に沢山優しくしてもらいました。なのに俺は、自分にとって都合のいいことばかりを覚えています。
物心ついた時から父親に物を投げられ殴られ蹴られ叩かれる毎日でした。キチガイだの馬鹿だのアホだのと怒鳴られる毎日でした。でもそれは俺が悪いのだとわかっています。当時からちゃんとわかっているんです。あくまで躾であって、ひどい怪我をするようなものではなく、父親も好きでそうしたわけではないと知っています。俺はひどい癇癪もちでした。泣いてぐずって暴れる子供でした。幼いうちだけでなく、小学校に入ったってそうでした。俺だってそんな奴には手を上げてしまうと思います。仕方なかったんですきっと。
でも、自分が悪いのだと認められない俺がいます。
父親も癇癪もちでした。気に入らないことがあれば声を荒らげ物に当たる人でした。家具が壊れたり壁に穴が空くこともありました。すぐにイライラしてしまう人でした。気温が高く暑いだけで、昼食が決まらないだけで、行き先が決まらないだけで声を荒らげる人でした。人の機嫌が悪くなるのを嫌い、人が怒って声を上げたり、泣いたり、ふてくされて黙ったりするとひどく怒る人でした。頭がおかしいのは父親もではないかと思ってしまうことがありました。
いつからか父親は手を上げなくなりました。あまり怒らなくなりました。もともととても優しい父親でしたが、より優しさが顕著になりました。父親が変わったのか、年をとっただけなのか俺にはわかりません。もう何年も殴られていません。たまに声を荒らげることがありますが、俺に向くことはほとんどありません。なのに忘れられません。終わったことにできません。殴られたことだけ覚えてて、殴られたときの様子は思い出すことができません。殴られる前と後のことを少ししか思い出せません。ろくに覚えてない癖に忘れられません。父親はひどく優しくなりました。本当は、全部俺の妄想だったのかもしれないと悩むこともあります。たまに怒鳴り声を聞き、確かにあったことなんだと苦しくなることもあります。夜になると涙が止まらないこともあります。でも、今はすごく仲良くできていて、もう何も怖いことはないはずなんです。もう終わったはずなんです。いつまでも引きずって、俺は最低です。終わったことだと割り切ることができません。苦しいです。辛いです。