休学明けの小瓶
世界の解析度があがると、その鮮明さにくらくらしてしまう。
たとえば、
リンゴをひとつの物質として漠然と認知していた頃に比べると、
「芯」「種」「皮」「実」「蜜」
と名前(またの名を概念)を知ったあとのほうが、
リンゴをよく理解できる。
けれどそのうち、
少し傷んでいるとか、
虫食いがあるとか、
農薬が使われているとか、
リンゴを何となく認知していたときは知らなかったことが気になるようになる。
私の学問。
学問と言えるほど未だ突き詰めていない勉強。
ひとつ知る度にわからない事が十増える。
1年休んでいたから、同期より1周遅れでサーキットを回っている。ぐるぐる。
焦っている。
まだ何も掴んでいないのに、1年後には卒論を書き始めているんだってさ!
大学院、行きたいけどうちは高校から奨学金だしなぁ。
バイトしなくても院の学費まで親に出してもらえる同期が羨ましい。
バイトの時間を余暇に、勉強に充てられる人が羨ましい。
少ない勉強時間で多くを学べる基礎のある人が羨ましい。
ちゃんと中学高校に通って勉強を十分にしていた人が羨ましい。
青春と呼べるものがある人が羨ましい。
お金のある人が羨ましい。
ないものねだりはきりがない。
人生何歳からでもやり直しがきくって
嘘じゃん、
と、少なくとも社会に出る前のわたしはそう思ってしまう。
やり直しがきく人は、
お金と時間と心の余裕が揃った人、
揃えられる環境にあった人。
努力して手に入れればいい、は生存者バイアスじゃん!
って、何に怒ってんの私。
「私は遅咲きでしたから」
「焦ってはいけません」
「体は資本ですからね」
2月くらいに連絡をもらった。
これは、本当に、そう。
納得をするということは、体験を伴わないとできないのかもしれない。
けっきょく特効薬はないし。
わかったから、腹くくって勉強するしかない。
経験を、得られなかった分は頭で。
取り戻せるタイミングは来たら掴めばいい。
来ないなら、修練修練。
あと15分で、妹が20歳になる。
そしたら、下戸の私がひとくち味見したお酒も、合法的に妹に飲んで(片付けて)もらえるね。やった。
妹の誕生日は、私がおねいちゃんになった日。
お風呂からあがって、勉強して寝よう。