2020.10.09.22:40
一緒に暮らしてた犬が死んだ。
一昨日は元気にちょこまかしてたのに。
一緒に洗濯物を外に干しに行ったし、
いつもと何ら変わりなく過ごしてた。
あの子の呼吸に違和感を感じて
心音を聞いてみたら
心音を妨害する程の音があったから
すぐに病院に連れて行った。
昨日の晩、病院で死んだ。
あの子、今夜は入院ねって
聞いた瞬間、置いて行くの？
って顔してて、
明日会いに来るからねって言ったのに。
明日って約束したのに
その日の晩に病院に行く事になった。
あの子は診台の上でぐったりしてて
少し血を吐いてた。
1回死んだけど家族が来て急に
生き返った。
変な音の交じる呼吸をしながら
半分ほど白目を向いてた目玉を
戻してこっちを見た。
少ししてからまばたきが
出来るようになって、
もしかしたらって少し希望を持った。
急に何回か頭を上げたから、
助かるかもって母さんが言った。
私はその動きが死を表すことは
分かってたけど言えなかった。
苦しそうに大きく身体を捩ってから
全く動かなくなった。
さっきまでの呼吸音が消えて
母さんの鼻をすする音だけが
静か過ぎる部屋に響いて
あの子は、苦しみながら死んだ。
あの子だけが、家族の中で
私を私として見てくれたのに。
両親や兄とは違って、
あの子だけは私が泣いたら
励まそうと頑張ってくれた。
私が呼んだら走って来て、
いっつも匂いを嗅いできて…。
今、1階からあの子のお気に入りだった
おもちゃのピポピポいう音が
聞こえてくる。
…母さんだ。
あの子が死んで思った。
人は、大切なものが死ぬと
普段信じない様な信憑性の無い、
いるのかの真偽もわからない、
霊体ってものを簡単に信じるみたい。
あの子がまだ居るからって言って
母さんは、誰も居ない所を見て
足をトントンって叩いて、
おいでって言う。
さっきのおもちゃの音だって
あの子が居るからって言って
鳴らしたんだろう。
あの子が可愛すぎるからって
私は毎日べったりで、
愛おしくて涙が出る程
今でもずっと愛してて、
急に居なくなったから
頭がおかしくなりそうだ。
部屋の隅っこに
捨てられないように隠してた
あの子の毛玉を回収しなきゃ。
命はどれも軽いって、
私の尊敬する人の言葉が
今になって、鉛玉みたいに
私に引っ付いて回って心を重くする。
確かにそうだなって思った。
急に、簡単に死んで、
今日は模試で学校に行ったけど、
泣かないようにって頑張ろうと
思ってたのに、
何も知らない友達に笑かされて、
作り笑いでも、笑えてた。
簡単に笑えてた。
何時間か前にあの子は死んだのに。
おかしいと思ってた。
最近私にはいいことが起こり過ぎてた。
英検2級も、数検準2級も、
全部すんなり受かって、
数百人の内から30人も受かってない
国公立大学推薦の1次試験も
簡単に受かって
その他にも何でもうまく行ってた。
いつ、どんな代償が来るか
ずっと怖かったけど、
私が苦しむだけだと思ってたのに
まさかあの子が死ぬなんて…。
肺に穴が開こうが、
呼吸困難になろうが、
血を吐こうが、
のだうち回ろうが、
私になら別によかった。
何であの子なの？
あの子は何も悪いことしてないし
いっつも良い子で、優しくて
気遣いまで出来て、賢くて
あんなに愛してる子なんて
他のどこにも居ないのに。
まあでも、すっごく悲しいし
何をするにも気力が沸かない事が多い
けど、
あの子が死んだから私も…
なんて事はしない。
私が辛い時に誰よりも支えてくれて
死にたかった私の命をつないだ
あの子に貰った命だから
生涯大事にするよ。
頑張ったね、お疲れ様。
ゆっくり休んでね、愛してる。
ありがとう。
