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昨日を思い返して。夢のように幸せな時間だった。

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手を握ったことなど、忘れてしまったためのかもしれない。
お酒の席だもん。単なる戯れとして、残すことでないかもしれない。

でも私にとっては、今年一番幸せで、穏やかな時間だった。
いつも二人っきりになりたかった。でもなれるわけ無い。
集団でいながら、笑いながら、心では寂しがっていた。


それが、偶然二人っきりだった。
小雪が降っていた。その人は入りなよ、そう傘を自然に差してくれた。
分かる。それは後輩女性に対する単なる思い遣り。
でも嬉しかった。
その人は忘れちゃったんだろうな。去年も、濡れるよ、そう車に乗る短時間だけど、傘を差してくれた。
おんなじ、青い傘。


ロマンチックにはならなかった。
悟られたく無かった。
努めて笑顔で、努めて愉快に、明るく振る舞っていた。
でもそんなことをしなくても楽しかった。
お酒の効果もある。ずーっと話して、ずーっと笑顔。


気がつけば駅に着いていた。
私は思わず呟いてた。着くの早いなー、って。電車すぐじゃん、間に合っちゃったね。って。寂しかったから。
たぶんその人は気づいてない。相当酔ってたもん。
駅にも偶然知り合いがいなかった。だから、待合室も電車内も2人だった。

嬉しかった。
でも、私は手に触れた以外は、相当自分を抑えられていたと思う。

ずーっと妄想してた。
その人と、もし電車に乗ったら、手に触れたいって。
寝た隙に、せめて触れたいって。でもバレちゃうかな?とか、ずっと妄想してた。


でもその時は自然だった。
向かい合って座って、私から、手を出して、マッサージしてあげる。
そう笑った。その人も笑って、躊躇わず手を出してくれた。 
ただ優しく手を擦って、揉んでいた。 

確かにお母さんみたいだった。
エッチな誘うような触り方だってあると思う。残念、私にそんな機能はない。ただ、優しく触れながら、その人を労っていた。

いつも頑張ってるね。
無理しないで欲しい。
感謝してる。

具体的に何言ったかは覚えてない。そんなことを独り言のように呟いてた。
そしたら、私の下車駅のアナウンスが流れる頃に、穏やかにポロッと「私さん、お母さんみたいだね」って、その人が零した。


穏やかな時間だった。
傷つくことも、勘ぐることもなかった。
私はただ笑って肯定していた。


たぶん変わっていた。
私が降りたくないとか、もっと一緒にいたいとか、そんなことを言ったら。
でも関係を壊したくなかった。傷つけたくもなかったし、その人に幻滅もされたくなかった。


ただ、その人を帰さないといけない、私は帰らないといけない。そう悟っていた。
別れ際手を降って、その人を乗せた電車がホームを出ていくのを見送った。

後悔は無かった。
それで良いんだ。これが正しい。 
そう思っていた。
もちろん辛かっし、正直悲しい。だって、少しでも長くその人といたかったから。


幸せだったと思う。
手を好きな人と、例え、信頼の証であってでも、片想いで握れることはそう多くない。
その人の握った手は、さらっとしていて、温かくて、ずーっと前から知ってるように懐かしくて、ずっと触れていたい手だった。
知っていた。私はこの手がきっと好きで、触れるだけで気持ちいいことを、こうやって握る前から知っていた。
だから、あぁやっぱり、やっと触れた、そんな想いが強かった。


週明け、もし、その人に避けられたり、世界が変わったら?
変わらないとは思っている。おんなじように、何もなかったように、たぶん普段のクールなその人がデスクにいるだけ。何も変わらない。

いいの。仮に避けられたり、嫌悪感を示されたら。私は、その人の特別じゃない、過ぎた願望だったと悟れる。諦めることができる。
だから大丈夫。


その人との関係は穏やか。
話せると幸せ。
先日、修理関係の質問を受けた。
その会話のテンポが、長年連れ添った夫婦やカップル、幼馴染のような、当たり前が満ちてて、穏やかで、和やかでとても幸せだった。

え?できないよ?ダメなんじゃない?
うーん、ここじゃないですか?
え、ここ?
私この会話、前もした記憶があるんですよね。
え、ほんと?あ、開いたわ。
ほらほら。
あ、なんかあるわ。
(ニコニコしながら、配線を接続)
出来た〜、なんだ大丈夫じゃん。
ほらね、絶対前もこんな会話したと思うんですよね。
うん、俺も思い出して来た。
出来て良かったですね。
うん、ありがとうね。

ただ、その当たり前な空気感が愛おしい。

俺、忘れ物したかも。遠いんだよね、あそこ。
んー、たぶんそこじゃないですよ。
え?本当?
だって、持ってましたよ。それ。
んー、覚えてない!
私が渡しましたもん。ほら、◯◯だよ〜ってふざけながら。
あー、思い出して来たわ(笑いながら)
となると、その後のお店か、駅じゃないですか?
駅には無かったよー。
じゃあ、店ですね。
あの店なら近いなー、良かったー。


そんな会話を自然体でしてる。
この人といると安心する。素でいても、受け入れて貰えるとわかっている。
だから、大好き。
でも、決して実らない恋。
全然自分がタイプじゃないことを知ってる。自分を異性と思ってない幼馴染を、ずっと想ってるような、そんな切ない関係なのは知ってる。


でもその人が大好き。
知られなくていい、悟られなくていい、実らなくても構わない。その人が大好きで、大切でたまらないのです。

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