宛メとは? 宛名のないメールを続けていくために寄付をお願いいたします。

No.無.ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30を聞きながら――実に穏やかな気持ちで過ごしていた今日、二日目の公休の夕方のことです。社用携帯が鳴り

カテゴリ

No.無.ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30を聞きながら――2番よりも明るい感じの展開があって好きなのです――実に穏やかな気持ちで過ごしていた今日、二日目の公休の夕方のことです。社用携帯が鳴り、手に取ってみると上長からの連絡でした。一瞬で私の中のスイッチが切り替わり、仕事モードで出てみると、何だか不機嫌そうな調子の声が聞こえて来る。一体何事だろうか、大きなトラブルでも発生したのだろうか、それは設備の問題なのか、人的なミスなのか、そう考えながら私は車の鍵を手にして玄関へ向かって歩き始め、片方の足は既に靴に収まっていました。

白蛇君さぁ、この間、本社から来た〇〇さんにさぁ、何か聞かれなかった?

低い調子の声でそう尋ねられ、何の話だろうと混乱する半面、事業所でトラブルが発生した訳では無いことに安堵するもう半分の頭で話の続きを聞きました。

――少し時を遡りますが、先日、私はマネジメント研修の為に本社へ行って来ました。早朝から電車に乗ることになり、普段、自転車か車で通勤している私にとっては慣れない疲労。ようやく辿り着いた会議室には、明らかに私より業務においても人生においても経験を積まれた顔ぶれが揃っている。幾らのほほんと生きている私でも、自分が事業所の印象を損ねる可能性がある以上、気を引き締めて研修を受けました。愛想は良くし、積極的に発言をし、その後の懇親会でも気配りを忘れないように……ect

前提の話として、私の上長と本社の某役員の方は折り合いが悪く、それは数年に及ぶ確執として今も尚、消えることがありません。それ故に、私も度々上長からその方が昇進するだとか、この会社はもう駄目かもしれない、そんな話を聞かされ、わが身可愛さに同調するばかり。そこで否定しようものなら、私は敵に認定されてしまうことでしょう。まあ、業務に影響が出たら転職しよう。そんなことを考えた後、それでは部下達はどうなるのだろうか、と考えてしまう。私の人生には大して関係の無いことだと割り切れるだろうか。これまで、多くの困難を共に乗り越えて来ました。彼らは部下であると同時に、同僚であり、先輩後輩であり、戦友でした。仕事の内容は好きです。待遇も良い。出来れば、この仕事を続けたい。私の育った土地のインフラの一つを担っているから。――本当にそうだろうか? 仕事に全霊を打ち込むようなふりをして、自分と社会とを呪っているだけなのか?

――研修にはその方も出席されていて、懇親会では私の隣の席でした。私が先に店に入り、下座の方で他の人を待っていた所、その方が隣に腰を下ろしたのです。私は何の恨みも持っておりませんし、わざわざ席を移動なんて出来る訳がない。人としての礼儀として、お酌はしますし、全く何も話さないと云う訳にも行かず、適当な世間話をして会はお開きになり、帰りの電車に一人乗り込んで、ようやく一息付きました。

後日、事業所に別の役員の方が打ち合わせに来られ、挨拶に行った時に、

白蛇君、この間は本当にごめんね。

と言われて、業務のことで頭が一杯の私は何のことか良く分からない。聞けば、某役員の方が私の隣に座ってしまったことを気にされているような口ぶり。私は持ち前の事なかれ主義を発揮し、

ええ、まあ、驚きましたけど、別に何か言われたとかはありませんでした。隣同士だっただけです。そもそも、座った後で席を移動する訳にも行かないです。

と答えました。

上長からの連絡は、私がそのような回答をしたことが、新たな問題の火種になりかねない、そのような内容でした。上長が予定よりも早めに今の役職を解かれるかもしれないとか、次の所長の任期が短縮されて、その後に私を据えて――私には確執が無い、或いは簡単に御し切れる人間だと判断されたことで――本社の人間が事業所に入り込もうとしているだとか、あれは罠だったとか、そんな話を休日の夕方に聞かされて、私は謝る他無い――実際に、私は仕事が進めばそれで良いのだから。それを気取られたのかもしれない。

白蛇君さぁ、とりあえず明日話し合いをしようか?

――金曜日に終わらせるはずだった、年末年始の資材の発注作業が、上長の一声で停止したことで、納期調整を急がなければいけないのに?

今回の件は協力してもらわないと、白蛇君が今のポジションに居るのは、俺とかが押し上げて来たことも大きいからさ。

――次々と辞めて行く先輩達の穴埋めの為に、準備期間を短縮されてその椅子に座ることになり、されど仕事の質は要求され、業務の遂行と勉強がずっと並行して続いているのに?

私の杞憂かもしれません。私のふとした行動が、上長の逆鱗に触れたとは言い切れません。あくまで私を自分のエリアに留めておきたいと云う不安故なのか。けれども、技術力に対する信頼と人間性への信頼は別であって、それが私を悩ませる。自分がせっかく事業所を守ろうとして来たのに、私のせいで全てが台無しになる、そんな風に考えてはいないだろうか?

研修が終わり、木曜日に職場に戻ってからは、遅滞していた仕事の遅れを取り戻そうと、休憩時間のことは忘れ、朝に夕に残業もして取り返そうと努めました。

金曜日は職場の飲み会があったから、その場に居る誰もが気持ちよく酒を飲めるように努めました。おかげで、家に帰ったのは翌日の5:00で、シャワーを浴びて寝床に倒れ込むように眠りにつき、10:00頃に部下からの電話で目を覚ます。何やらトラブルが発生しているようだから、寝巻きに上着を羽織ってそのまま職場へ急行します。現場を確認してみますと、起きていた問題は簡単な調整で収束することが分かり、一通りの指示を出して、12:00頃に帰宅。帰り道にスーパーで買ってきた惣菜弁当を温めるのも煩わしく、そのまま胃に押し込んで布団に潜りました。気が付くと翌日の4:00になっており、洗濯やら掃除やらを済ませる為に起床。それから買い出しを済ませて、寝椅子に横になって文章を書いたり、本を読んだり、音楽を聞きながら過ごしていました。――そんな時に、電話が鳴りました。

遣る瀬無い。私が失望すべきは運悪く出会った軽蔑すべき男か?他人の顔色を伺ってばかりの己自身か? 上長にしても本社の役員にしても、誰も私の都合等、考えないのだろうか。何故、私がそれぞれの思うように動く、それを拒絶するかもしれないと考えないのだろうか。役職や賃金が、私の色すら失った絶望や、そこに根を張る諦観の慰めになるとでも言うのだろうか?私は余りに己を偽り過ぎただろうか?



――物事は成るように成り、私は大きな流れの中を漂泊して行くのだから、別に気に病むなんてことはありません。ただ、あまりに不愉快な気持ちで週末を終えると云うだけのこと。私が夜明け前に首を吊れば、彼らはどんな顔をするだろうか。……そんなつもりも毛頭無い。私は死ぬくらいなら、その前に殺す人間だから。

229825通目の宛名のないメール
この小瓶にお返事をする

お返事がもらえると小瓶主さんはとてもうれしいと思います
小瓶主さんの想いを優しく受け止めてあげてください

以下はまだお返事がない小瓶です。
お返事をしていただけると小瓶主さんはとてもうれしいと思います。

宛メのサポーター募集
お知らせ
お知らせ一覧
宛メサポーター募集 noteはじめました。 宛名のないメールの管理人のサロン LINEスタンプ 宛メで音楽 宛メのアドバイザー石渡ゆきこ弁護士 宛メのアドバイザーいのうえちかこ(心理士・カウンセラー) 悩み相談ができる相談所を集めたサイト
宛メについて
お返事のこころえ(利用者さんの言葉) 宛メに参加している人たち(利用者さんの言葉) 宛メとの出会い(利用者さんの言葉) 初めての方 Q&Aヘルプ 宛メ、サポーター募集! 運営委員のご紹介 運営委員ブログ プライバシーポリシー(みなさんの情報について) 特定商取引法に基づく表示(お金のやりとりのルール) お問い合わせ 運営会社
X・Facebook・Instagram
フォローやいいね!すると宛メの情報が届きます。
緊急のお知らせなどもこちらから配信しますので、ぜひ登録をお願いします。