守ってくれるのを待っているお姫様よりも、助けに行く騎士の方が憧れちゃうな。
だって格好いいんだもん。
私も誰かを守る騎士になれるかな？
なれると良いな。
どんなに此処で守りたい、助けたいって思っても、できないんだよね。
リアルには干渉できないし、言葉だけじゃどうにもならない時も沢山ある。
私は私でしかない。誰かの悲しみを理解するなんてできないし、苦しみを引き受けることなんて無理。そんな事とっくに知ってる。
だけど、それでも守りたい、助けたいなんて思ってしまうからたちが悪いんだ。
童話の騎士は本当に凄い。お姫様をちゃんと救ってあげられるんだから。一時的なものじゃなくて、未来までハッピーエンドにしちゃうんだ。
私もそういう人間になりたい。なりたかった。
まあ、別にいっか。
アタシはアタシ。とりあえずは自分のことをちゃんとやる。誰かをどうこうしようなんてのはその後。
でもね、この前嬉しい事を言われたの。
｢留学も作曲も普段の授業も頑張ってる貴方を見ると、もっと頑張んなきゃなって思える。ありがとう｣って。
良いこと言うじゃんアタシの友人。
やっぱりアタシは口下手だから言葉じゃ何もできない。だけど、行動では示せるかもな。
アタシが我武者羅遮二無二に頑張る事が、誰かの道に繋がるかもしれない。
上手いこと言うよりは行動する方が得意だし、語らないのが正解かもね。
でも、此処じゃ言葉以外は通用しない。
どれだけアタシが頑張ったところで、その証明もできなけりゃ姿も見せられない。もっともっと、言葉を鍛えなきゃいけなかったんだ。
もしアタシがもっと上手に話せたら、君は此処を去らずに済んだのかな。
君はもう、死んでしまったのかな。
もしもう一度話せたら、アタシはきっと……。
いや、やはり騎士にはなれないよ。
多分、君の方が強いから。
もっと強くならなきゃな。
目の前で悲しむ人に何もできないのは、凄く悔しいしもどかしいもん。
なんて言ったところで、アタシの助けを必要とするお姫様なんていないと思うけどね。
やっぱり魔法使いの方が良いや。
神秘的で格好いいよね。
