通りすがりの狼です。
あなたを納得させる言葉を、狼は持ってはいないけれど。
疲れましたか。眠れませんか。
そうやって感じているあなたは、きっとたくさん考えてたくさん道を探して、ここまで歩いてきたのでしょうね。
自分で自分を奮い立たせて、一歩踏み出した時に限って、そこには落とし穴が隠れていたり。抜け出そうと必死に登っても、無情にも手足は疲れて動かなくなる。
たくさんたくさんもがいて、そうしてそこで蹲っているのですね。
狼は何かを掴める手も、あなたを引っ張りあげられる長い尾も、持ち合わせていないけど。
それならば、狼もそこに降ります。そして狼の背中に乗せて、今度は狼が壁を登ります。
そうしたら、あなたがいってしまう前に、少しだけ狼とお話してくれませんか。
あなたの「疲れた、死にたい」を狼に聞かせてくれませんか。
狼は初めて出会ったあなたのお話を、言葉を、声を聞きたいのです。
だから、お隣に座ることを許してくれませんか。
死なないでとか、行かないでとか、狼はそれを言えるほどできた生き物ではないから。だからせめて、狼にあなたの文字を教えてくれませんか。