僕は本棚のずっと奥に仕舞われた1冊の本
暗闇の中で、ほこりを被ってただ立ってる
ご主人様も他のお方も僕の存在を忘れてしまった
手に取られるのは魅力的で鮮やかな背表紙をまとった綺麗な本だけ
1人きりで、誰も居ない空間は光もなくて
僕はご主人様のこと好きだったのに
ご主人様は僕のこと嫌いになってしまったのかな
毎日、手に取ってくれてたあの日はいつだっただろう
書斎の机に置かれたあの日は幻だったのか
もう記憶からも消されてしまったの
ただ1人
孤独に前だけを向く
1つの光が差し込んだ
後ろを向くと、泣きながら僕を見つめるご主人様が居た
彼はこう言った
「私の記憶を、今までの思い出を書き記すよ」
そう言った
僕は温かい手に握られて
ページを開いて
ご主人様は書き記していった
書きながらこう言ってくれた
「君は私の日記。私の思い出日記。どんなに綺麗で鮮やかな本でも君に適うものは居ない」
、と
僕は薄汚れた日記
ただの本じゃないんだ
ご主人様の手で描かれた本
ご主人様の思い出
僕は孤独じゃなかったんだね
書き終わると彼はこう言った
「君は最高の友達だ」