夏の気配が近づく
湿気が体に纏わりつき
逃れようのない鬱陶しさを感じる。
若い緑は雨粒を抱え込み、蜘蛛の巣は水晶を飾った様に艶やかである
何処かから、花の芳香が漂う
無意識に花を探してしまうと、蜜を求める虫にでもなった気分だ
分厚い白い花が少し茶色くなってなお香り続けている
その香りを見つけた一瞬だけ、夏の気配を忘れた
濡れた地面を踏み締めると、いつも以上に大きな足音が鳴るように感じる
尾を引いて脳裏に残る音となり
より身を重く感じる
傘をさして歩いてみる、
風に遊ばれているよう
軽やかな音が鼓膜を叩き
余計な考えは押し込められた
でんでん虫は時間が惜しくないようで
のんびりゆっくり進んでいく
目的の場所もないようで
右往左往と足跡を残していく
ふぃあんせは見つかりそうかい?
来年、君の子供は雨の日を楽しめそうかい?
人は忙しく気狭に今日を生くのにえらい違いじゃないか
これから蝉が鳴き
太陽が地面を焦がし
景色は眩しく白く歪む
虫が奏で
稲背伸びし穂をつける
あぁ夏だ
去年の暑さを忘れつぶやく