前作『岳』に出会ったのは、“図書庵”を夢みていた時でした。
日本は奥が深く、世界は果てしなく広い。
大きいばかりが夢じゃない。小さくても、それはでっかい夢。
子どもたちが入りやすい漫画を通して、夢のきっかけをみつけてもらえるような作品をと、私の独断と偏見で買い漁ってましたが、要は勿論、私が「面白い!」と思う作品のみです。
登山経験は無いに等しいのですが、山に近い街に移ったことが、引かれるきっかけでした。
山は美しく雄大なだけではなく、時に死に至らしめる程の厳しさを見せることもあります。
でも、苦難を越えて一歩ずつ前へ進み、頂きに立った瞬間の喜びは、人生と似ていると思いました。
『BLUE GIANT』シリーズは、兼ねてより知ってはいたのですが、中学校の部活でサックスを始めた娘を思い出してしまい、また鬱状態になることが不安で、本屋で手に取っては、棚に戻すの繰り返しでした。
あの様な結果となり、“図書庵”の夢を諦め、再び一人暮らしを始めた頃、憂さ晴らしもあって、本屋で買い込んだ中に1巻が入っていたのです。
「世界一のジャズプレイヤーになる」
途方もなく大きな夢を背負って、日本から海外へと一歩…、また一歩と、自分の歩幅で踏みしめてゆく姿に、『岳』と同じくらいの衝撃を受けました。
主人公の演奏に歓喜する人たちの場面では幾度となく、友人に頼まれてやった映画祭の思い出が蘇ります。
借り物の作品を流しただけではありますが、自分たちの手で会場を作り、頭を悩ませて作品を選んだ甲斐あって、訪れてくれた子どもから大人まで、みんなの笑顔が見られた悦びは、何ものにも代え難い最高のものでした。
もし…
もし、また機会が巡ってきたならば……
また笑顔が見たいです